MLB Column from USABACK NUMBER

GMが見たジョニー・デーモンの「秘密」 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/04/19 00:00

GMが見たジョニー・デーモンの「秘密」<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 レッドソックスGM、テオ・エプスタインの評判がよい。2002年、28歳でGMに就任したときは、史上最年少GMとして、「まだおむつがいる」だの「『ねんね』の時間があるからナイト・ゲームは試合終了まで見ることができない」だの、メディアからずいぶんからかわれたものだが、誰も解くことのできなかった「ベーブ・ルースの呪い」を解き、レッドソックスに86年ぶりのワールドシリーズ優勝をもたらしたのだから、評判がよいのも当然である。

 思えば、昨季、トレード期限直前にチーム最大のスター、ノーマ・ガルシアパーラをカブスに移籍させたときは、非難の大合唱を浴びたものだった。「ワールドシリーズに勝つためには守備を強化する必要がある」と、エプスタインはトレードの理由を冷静かつ理路整然と説明したが、86年間優勝から遠ざかっていたチームのGMの言葉を額面通りに受け取るファンなどいなかった。

 ところが、ガルシアパーラのトレード後チームは勝ちだし、本当にワールドシリーズに優勝してしまったのだから、GMとしての手腕にファンは絶大な信頼を寄せるようになった。「In God We Trust」とは、神に対する絶対的信頼を表す言葉として米国紙幣にも書かれていることで有名だが、レッドソックス・ファンの間では「In Theo We Trust」と言われるまでになったのである(Theo はエプスタインのファースト・ネーム)。

 おまけに、ガルシアパーラのトレードのときもそうだったが、インタビューでどんなに意地悪な質問をされても、決して感情的になることなく誠実に受け答えするので、人に不快感を与えることがない。不快感を与えないどころか、イェール大学出身と学歴も最高、その上、とびきりのハンサムときているから、「エプスタインと結婚したい」と願う女性ファンは無数、ニューイングランドでは「ロック・スター」に匹敵する人気を誇っているのである。

 このロック・スター並みの人気に目をつけたダンキン・ドーナッツが、つい最近、エプスタインをテレビCMに起用して話題を呼んでいる。CMの相棒は、昨季、長髪と髭で人気者になったレッドソックス中堅手ジョニー・デーモンだが、人気のないバスルームでデーモンの「秘密」を見てしまったエプスタインが、ダンキン・ドーナッツの新商品であるアイス・コーヒーを口止め料代わりにゆすり取る、という筋立てのCMである。

 ちなみに、エプスタインが見たデーモンの「秘密」とは、長髪はかつらで、実は見事な禿頭であったいうものだが、バスタオルを腰に巻いた「禿デーモン」が、かつらを丁寧に櫛で梳くシーンは、何度見ても笑ってしまう。

 ところで、堅く素人臭が抜けきれないデーモンの演技と違い、エプスタインは、プロ並みの如才ない演技を見せつけてファンを唸らせた。演技が上手な理由を聞かれたエプスタインは、「いつも、マスコミのインタビューに答えるときは演技しているから、自然に演技力が身についた」と、うそぶいたという。

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