MLB Column from USABACK NUMBER

バリー・ジートの「アホウドリ」契約。 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2007/01/09 00:00

バリー・ジートの「アホウドリ」契約。<Number Web> photograph by AFLO

 ジートの場合、昨季の成績は、旧来の防御率では3.83(ア・リーグ10位)とまずまずであるが、DIPS防御率4.87はリーグ33位、とても「最高クラスの投手」とは言い難い(ちなみに、リーグ1位はサイ・ヤング賞を受賞したヨハン・サンタナの3.05)。しかも、ジートのDIPS防御率は、2001年のリーグ6位(3.67)を最高に、以後、02年14位(4.07)、03年18位(4.26)、04年24位(4.53)、05年28位(4.81)と下降、力が衰え続けていることも一目瞭然である。今回の史上最高額契約が「アホウドリ」契約と批判される理由がおわかりいただけるだろうか(データはESPN.COMによった)。

 ちなみに、ジートの代理人は松坂大輔と同じスコット・ボラスで、「スーパーエージェント」の評判に違わず、これまでも巧みな交渉術によって、数多くの「アホウドリ」契約を成立させてきた。ケビン・ブラウン(ドジャース、99年から期間7年、総額1億500万ドル)、アレックス・ロドリゲス(レンジャース、01年から期間10年、総額2億5200万ドル)と、ボラスの術中にはまって「アルバトロス」契約を締結させられた球団は枚挙に暇がないが、どの球団も、まず例外なく、「アホウドリ」の重みに耐えきれなくなる運命に陥っている。契約期間が満了する前に、年俸の一部負担という「熨斗(のし)」までつけて、せっかく獲得した選手を手放さざるを得なくなっているのである。

 ところで今オフ、ヤンキースは日本人投手二人のポスティングに際し、松坂大輔のときは大差で競り負け、井川慶のときは、他を大きく引き離して競り勝った。松坂の評価がわずか3200万ドルであったのに対し、井川の評価は2600万ドル、ヤンキースが二人の投手につけた値段に大差はなかった。力が大きく異なる二人に似たような値段をつけるなんて、これは、立派な「アホウドリ」入札と言っていいのではないだろうか。

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