佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER

開幕前の明と暗。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/03/14 00:00

開幕前の明と暗。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 今年のF1シリーズに参戦する二人の日本人ドライバー、佐藤琢磨と中嶋一貴は暗と明、対照的なオフシーズンを送った。佐藤琢磨がマシンを走らせたのはたった2回というお寒いオフだったのに対し、初のレギュラーシーズンを迎える一貴は、ほとんどフルテストを消化し、じゅうぶん“戦える”状態で開幕戦メルボルンに旅立って行った。

 中嶋一貴は昨年すでに最終戦のブラジルにF1引退を表明したA・ブルツに代わってウイリアムズ・トヨタを駆りスポット参戦。少なからぬミスを犯しながらも、1コーナーで佐藤琢磨、D・クルサードらをオーバーテイク。オーナーのF・ウイリアムズも大満足の華々しいデビューを遂げたことはまだ記憶に新しい。

 昨年から今年のオフにかけてのウイリアムズ・トヨタはフェラーリ、マクラーレンのトップチームには及ばないものの、ルノーに匹敵するパフォーマンスの高さを随所に披露。そんな中で中嶋一貴はバルセロナ・テストの最中、1コーナー手前でフロント・ウイング脱落が原因で大クラッシュ! ところがラッキーなことに傷ひとつ負わず、その後も順調にテストを続け、予選モードのパフォーマンス・ランではチームメイトのニコ・ロズベルグよりも速いタイムを記録するに至った。

 3月7日に行われた記者会見では「あっという間に終わってしまったオフシーズンですが、メルボルンにむけて充分な準備ができた」と語り、緒戦からいきなりのポイント獲得も期待できそうな雰囲気が漂っていた。

 かたや佐藤琢磨が関係者の前に現れたのは3月10日のホンダF1記者会見の席上。

 じゅうぶんなテストができなかったのはスーパーアグリF1チームが財政危機に陥り、せっかく出来上がったマシンを走らせることができなかったからで、一時はチームの存続が危ぶまれるほどだったが、イギリスの投資家グループといわれる“マグマ”との交渉の結果、なんとかメルボルンにマシンを送り出すことにはなった。

 記者会見に新しいチームウエアで臨んだ佐藤琢磨は「常に2008年参戦を前提に準備していましたが、テストがほとんどできず、マシンは50%くらいのできで開幕戦に臨まなければなりません。テストがない分フィジカル・トレーニングに励みましたが、フラストレーションの溜まるオフでした。トラクション・コントールなしのマシンのイメージはある程度できてはいますが、他のチームがテストで経験した雨の路面で走らせたことはないし、スタートの練習もまったくやれてない。エンジンのドライバビリティのセッティングも満足行く状況にはない」と、四面楚歌。

 とはいえ「昨年はシーズン中盤からまったくマシンの開発ができない状態でしたが、それは解決しました。シーズンを通じてチームを立て直して行きたい」と、前向きの姿勢は崩さなかった。なお、スーパーアグリの今季用マシンは「去年のホンダ車のシャシーに今年用のリヤエンドを付け、空力パーツは昨年のスーパーアグリのものを流用した」(佐藤琢磨)いわゆるカスタマー仕様。正式名称はSA08となろうが、実質的にはSA07Bである。

 さて、開幕戦の佐藤琢磨と中嶋一貴の戦いやいかに。明・暗が逆転することがあるのだろうか。日本のファンとしてはぜひとも明・明の開幕戦となってほしいものである。

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