ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2005年 VSラトビア 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2005/10/11 00:00

2005年 VSラトビア<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 「ミスがらみの失点だった」。

 2−0のリードを奪いながら、最終的には2−2に終わったラトビアとの親善試合終了後、ジーコ監督はこう言った。

 以前にも聞いたことのあるセリフ。それを再び口にしなくてはならない現状には、指揮官もがっかりしたに違いない。後半早々までの展開を考えればなおさらだ。

 日本代表監督は、「あれだけ試合を支配していたのに引分けに終わってさびしい」と言葉を続けた。

 10月8日、ラトビアの首都リーガの名門クラブ、スコントFCの本拠地で行われた東欧2連戦の初戦。日本は開始5分にFW高原が相手の意表を突く38メートルのシュートを決めてリードを奪うと、中盤のパスワークで相手を圧倒して試合の主導権を握り、後半7分には中村がPKを決めて2−0とした。

 だが、2−0のリードで油断が生じたのか、それとも疲れがでたのか、足が止まり始める。一方、ラトビアは後半23分にCKからのこぼれ球で1点を返して勢いづき、攻撃を加速する。一度スローダウンした日本選手の頭と体は、相手の変化に対応しきれない。次第にバランスを崩し、連係が乱れてミスが出始めると、押し込まれる場面が増える。

 日本は守備の負担を減らして相手の攻撃を緩和すべく、3−5−2に切り替えたが状況は好転せず。そして後半44分、左SBからディフェンシブハーフに入った中田浩二からDF田中誠へのバックパスをルービンスにさらわれてドリブルで持ち込まれ、同点弾を決められた。

 相手の出方の変化についていけない、試合の中でペースを変えられないナイーブさを見ると、残念ながらチームは試合を支配しきれるだけの強さを、まだ本当には手にしていないと言わざるを得ないだろう。

 「個人のミス、一本のミスでやられるのがこのレベル」と、ジーコ監督は指摘した。

 さらに、試合の時間帯とフィールドでのプレー位置を考えて、不用意なプレーをしないことは肝に銘じておくべき勝利への鉄則だ。指揮官からも再三にわたってチーム全体に「ミスはするな」と説かれている。

 にもかかわらずの失態は、フレンドリーマッチゆえの油断か。あるいは、23人の本大会メンバーに選ばれたいがためのアピール心ゆえの副作用か。

 この時期、選手が自己アピールに懸命になるのは自然なことだ。中田浩二に限らず、2003年コンフェデレーションズカップ以来の代表試合出場となったMF松井や、昨年12月のドイツ戦以来の招集を受けたFW大久保はもちろん、控えに甘んじていたDF茂庭や右SB駒野らも、自分のよさを出そうと必死だった。

 それがいい方向に現れた一例がMF稲本であり、松井だろう。

 稲本は、攻めに走りがちな日頃の自分のプレーを抑えて、中盤の底で相手の攻撃の芽を摘み、左右へフィードするという自分の役割をしっかりと認識したプレーを見せていた。稲本の献身的なプレーで助かったのは最終ラインだけでなく、彼の前でプレーする松井、中田英寿、中村の中盤三人だったはずだ。

 もちろん、彼らも守備の意識を念頭に置いていることはプレーによく現れていたし、効果的にこなしていたと言えるだろう。2−0リードを奪うまではこの三人がバランスをとりながら自由にポジションチェンジして、日本の攻撃を組み立てていた。また、駒野の右サイドでの適確な守備と攻撃のタイミングも悪くない出来だった。

 久しぶりにMFからFWまでの6人を欧州組で編成して臨んだ試合だったが、2−0までの展開に限定すれば、興味深い組み合わせと言っていいかもしれない。

 ジーコ監督は、「チームとしてのW杯への本格的な強化は来年に入ってから。今は実戦の中で人を見てみたい」と話している。

 そう考えれば、確かにこの時期の親善試合での勝敗はさほど意味を持たないのかもしれない。

 だが、親善試合とはいえ、勝ち試合を落としたという事実から見えてくるものは小さくない。

 「学ぶべきものは顕著に出ている。これを繰り返さないことだ」とジーコ監督は言った。

 それを選手は次のウクライナ戦で実践できるのか。一人一人が各試合で出た課題をクリアしていくことこそがチーム強化に大きな意味をもつことは、今さら言うまでもない。

 キエフの街はウクライナがW杯出場を決めて祝福ムードで盛り上がっている。しかも、チームはラトビア以上に歯ごたえのある相手だ。その試合で日本代表はなにをどこまで試すことができるのか。なにを持ち帰ることが出来るのか。新たな収穫を期待したい。

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