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WBC雑記帳 : 繰り返し放映された珍プレー、パナマ大統領の懇願、etc…… 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/03/10 00:00

WBC雑記帳 : 繰り返し放映された珍プレー、パナマ大統領の懇願、etc……<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 いよいよWBC開幕、米国も野球ファンの間に限れば大いに盛り上がっている。スポーツTV・ESPNと今年初めに開局したMLBネットワークとで全試合を生中継、多い日は24時間の間に6試合をモニターしなければならないから、見る方も大変である。今回は、WBCを巡る当地での話題を、「オムニバス」形式でお伝えしよう(なお、本稿は米国時間3月8日、米国が第二ラウンド進出を決めた直後に執筆された)。

(1)東京ドームの珍プレー

 当地でA組(アジア地区)の試合をフォローするファンは少ないし、ほとんどのファンはWBCが東京で一足早く開幕していたことさえ知らなかった。しかし、ESPNが毎日繰り返して放映するニュース番組「Sports Center」の「珍プレー特集」で、東京ドームでの珍プレー二つが取り上げられたおかげで、WBC開幕の情報は米国ファンの間に広く知れ渡ることになった。ファンのWBCへの関心を高めることに貢献した珍プレー二つとは、中国・孫国強の下手投げ偽投ボークと、台湾=韓国戦・張本勲氏の始球式だった。首位打者7回の記録を持つ名選手のあまりの「弱肩」に、米国ファンも度肝を抜かれたのである。

(2)ドミニカ共和国敗戦の番狂わせ

 D組の開幕戦、MLBのスター選手ばかりでチームを編成したドミニカ共和国が、現役メジャーリーガーが一人もいないオランダに、2対3でまさかの敗戦を喫した。この試合、オランダの安打3本はすべて内野安打、初回の3点は、ワイルドピッチと2エラーで「プレゼント」されたものだったが、ドミニカ共和国の度重なる走塁・作戦ミスにも救われて逃げ切った。「野球ほど実力差と勝ち負けの結果とが食い違う確率が高いスポーツはない」という言葉の正しさを実証するかのような試合だったが、まさかの敗戦にドミニカ共和国は気が引き締まったと言われ、今後の奮起が期待される。

(3)パナマ 大統領直々の懇請

 第一ラウンドで2連敗、予想通り早々と敗退したパナマだが、国民も熱心に応援したし、選手達も真剣に頑張った。パナマの真剣さを象徴したのが、ヤンキースのクローザー、マリアノ・リベラのチーム参加だ。肩の手術後でリハビリ中、「投げられない」ことはわかっているのに「応援役」でベンチ入りしたのだからすごい。また、キャッチャーのカルロス・ルイス(フィリーズ)はWBCよりもレギュラーシーズンを重視、不出場を決めていたのだが、マーチン・トリホス大統領から「うちのチームには捕手がいない。頼むから出場してくれ」と電話で直々に懇請された末での出場だった。

(4)米国のチームワーク

 前回8位に終わった米国が捲土重来を期している。強豪カナダ、ベネズエラに連勝、第二ラウンド進出を決めた。ESPN解説者のリック・サトクリフによると、大物スター達がお互いを無視し合っていた2006年のチームと比べて格段にチームワークが良いという。首脳陣もシーズン中は仇同士となる選手達に配慮、ロッカーの配置にまで気配りしている。たとえば、ここ数年、メッツとフィリーズとは、選手達がメディアを通じて舌戦を展開するほど敵対関係が強まっているが、メッツのデイビッド・ライトとフィリーズのジミー・ロリンズのロッカーが隣り合わないようヤンキースのデレク・ジーターを間に入れて気を使った。いわば、ジーターに、交戦中の二国の間を取り持つ「スイス」の役を期待したのだが、ジーターは、ライトとロリンズの二人に「今年のナ・リーグ東地区はどっちが勝つの?」と話しかけて、逆に火に油を注いだという(シーズン中の厳しいライバル関係をジョークにしてしまうほど、チームはまとまっているのである)。ちなみに同じ遊撃のロリンズとジーター、第一・二戦とも試合半ばで交代、仲良く出場時間を分け合った。

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