佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

初のウェット・レースは貴重な体験に。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2004/09/16 00:00

初のウェット・レースは貴重な体験に。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「路面がチョイ濡れで走り始めたら乾いて行くようなコンディションにドライタイヤでスタートするのがいいかな。ミシュランはそういうコンディションに強いんです」

 予選を5番手で終えた佐藤琢磨に「明日は午前中雨という予報もありますが? 」と訊くと、そんな答えが帰って来た。

 たしかに温まりの早いミシュランはそれが大きな武器のひとつである。フェラーリに装着されて死角が見当たらないブリヂストンも、スタートから2周ほどはミシュランに置いて行かれることがままある。

「でも、どうせ雨ならザンザン降りがいいかな」と、佐藤琢磨はすぐにつけ加えた。 

 雨のレースは紛れが多いが、それは振ったり止んだりしてコンディションが目まぐるしく変わるからだ。琢磨がそれよりもコンスタントに降った方がいいというのは、ふたつの理由があった。

 ひとつは、ミシュラン雨用タイヤがスタンダードレインと呼ばれる浅溝タイプより、エクストリーム・ウェザー・タイヤと呼ばれる深溝タイヤの方が安定しているからだ。

 もうひとつの理由は、マシンの仕上がりに自信があるからだろう。本当はドライの方がいいのだが、どうせ雨になるのならコンスタントなコンディションで存分に実力を発揮したいということなのだ。

 さて、決勝日早朝、モンツァは曇り。しかし8時過ぎから小雨となり、それは次第に勢いを強め、9時過ぎからは大雨。それが11時過ぎから小雨となり、正午過ぎには止み、フォーメイションラップ・スタート20分前の1時40分頃には、陽が射して来た。路面は濡れている。大方のドライバーはドライ・タイヤをチョイスし、佐藤琢磨もドライである。

 オープニングラップ、琢磨はライコネン、バトンに抜かれ6位でスタンド前に帰って来た。しかしその走りはいつになく慎重に見える。

 路面が乾いてからはペースも上がり、モントーヤとシケインで勝負して抜き去ってもいる。フィニッシュは4位。しかしバトンには数秒届かなかった。オープニングラップでバトンを抑えていれば表彰台も……の思いも残った。

「今日のレースは2台揃ってしっかりフィニッシュするのが大事でしたから、序盤は慎重にいきました」と、レース後の琢磨。その甲斐あってBARホンダはルノーを3点差に下して逆転、コンストラクターズ・ランキング2位にジャンプアップした。それはそれとして次のコメントを聞いてアレッ? と思った。

「初めての雨のレースも経験できてよかったです」

 そうか、佐藤琢磨はこれまでにF1決勝本番でウエット・レースはなかったか。F1参戦33レース目にして初めての雨、慎重に行ったのもこれで分かった。

 次戦・上海は知らず、鈴鹿、インテルラゴスで雨になる可能性は高い。雨でも攻める佐藤琢磨が見たいのだ。

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