カンポをめぐる狂想曲BACK NUMBER

From:ラコルーニャ(スペイン)&ロンドン(イギリス) 「我ながら冴えている?」 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byShigeki Sugiyama

posted2004/05/14 00:00

From:ラコルーニャ(スペイン)&ロンドン(イギリス) 「我ながら冴えている?」<Number Web> photograph by Shigeki Sugiyama

サッカー系グッズを身につけることを
日頃から否定しているのに、なぜだか
ポルトのライターに手が伸びた。すると……

 ポルトとデポルティーボ。僕にとって馴染みがあるのは断然後者だ。訪問回数は7~8回対30数回。観戦試合数も、周辺取材の回数もそれに比例する。イルレータ監督にも何度となく話を聞いたことがある。だから、準決勝での両者の対戦が決まると、気持ちは自ずとデポル寄りになっていた。

 しかしだ。それが案外そうでもなかったのだ。思ったほどではなかった。普通なら「デポル頑張れ!」ってな感じの応援記事をどこかに書きそうなものだが、そんなことはしていないし、ある雑誌の予想記事には「デポルは案外苦戦する」とまで書いている。自分でも感心するほどクールだった。装っていた面もなきにしもあらずだが、一方でそれが正直な気持ちであることも確かだった。

 そしてデポルは、僕の危惧した通りポルトに敗れ去った。不運に見舞われたとはいえ、負けは負け。馴染みのチームが目の前で敗れ去る姿は、やっぱり切ない。しかし、試合終了直後、記者席で僕はそう感傷に浸ることもなく、というか「サッカーとはそういうモノさ」と、強引に割り切ろうとしたのかどうか、自分でもよく分からないが、とにかく、思っていた以上にサバサバした感じで、ポケットから煙草を取り出し、一服しようとした。その時である。僕はギョッとした。ライターの絵柄を見て。「FCP」。手中に収めていたのは、FCポルトのオフィシャルグッズだった。

 もちろん、日本を発つ時から気付いていたし、試合前やハーフタイムにもそれで煙草に火を付けていたが、決着が付いた直後に、無意識にFCPのライターを握りしめてみると、その行為がとても不思議に思えてならなかった。冴えているといえば冴えているし、変な奴といえば変な奴。改めて自分を可笑しく思った。

 ライターを買ったのは、ポルトがマンUとの第1戦(チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦)で、2-1の勝利を飾った数日後だったと思う。買った場所はもちろんポルト市内で、確か、モウリーニョ監督へのインタビューは、その前日叶ったように記憶する。ポルトは行けそうだ! モウリーニョは格好良い! そう直感したからこそライターに手が伸びていたんじゃないかと思う。サッカー系グッズを身につけることを、日頃から99%否定している僕には、とても珍しい行動だった。それほど、ピンと来たというわけだ、その時に。

 試合後「リアソール」を出ると、日本人観戦者の一団を発見。その中にいたデポル狂は「負けちゃいましたね~」と、僕に悲しげな顔を向けてきた。「サッカーってそんなもんですよ」。確か、そんな台詞を返したように記憶する。ポルトのライターでも翳して悪ぶってみようかなと思ったけれど、それはさすがに差し控えた。

 翌日、ラコルーニャからマドリー経由でロンドンへ。

 マドリーのバラハス空港でBA機への搭乗を待っていると、サッカー観戦者と思しき10人ほどの日本人に遭遇。その中には前夜、リアソールで見かけたデポルファンもいた。こちらに「今日の試合はついでですから……」と言葉を向けてきたので、僕はすかさずこう返した。「ついでに見る試合に、当たりは多いんです」。

 チェルシー対モナコは、実際とても面白かった。カンは大当たり。感激、感動モノの試合だった。その場にいられた喜びを感じずにはいられない名勝負だった。

 チェルシーの記者席は、ピッチとは目と鼻の先。5メートル先がベンチで、10メートル先には選手がいた。だからというわけではないと思う。両軍選手のファイトに仰天したのは。チャンピオンズリーグ準決勝の重みが、手に取るように伝わってきた。特に守備に回った時のアクションに凄みを感じた。ここまで真剣に守備をする選手を見た覚えは過去にない。

 ファイトがより理に叶っていたのがモナコで、空回りしたのがチェルシー。一言でいえばそうなる。とにかくモナコは素晴らしかった。僕の予想通り。

 最も期待するチーム=モナコ。決勝トーナメント1回戦が始まる前、「Number」が行ったアンケートに、僕はそう書き記している。だから僕はゲームに酔いしれながらも、エヘンと胸を張ることを忘れなかった。因みに、その時、書いた優勝予想はデポルorユーベ。全体的に、良い線行っていると思いません?

(注:写真は「サンティアギーニョ」。ラコルーニャ名産の魚介類)

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