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最強軍団マクラーレンの蹉跌 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2005/07/29 00:00

最強軍団マクラーレンの蹉跌<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 野球は門外漢、単なる生涯一外野にしか過ぎないから無責任を言うが、あれだけの逸材を揃えていながらなぜ巨人が勝てないのか?

 ガラにもなくそんなことを考えたのは、ホッケンハイムで最強軍団マクラーレン・メルセデスの崩壊を見たからかもしれない。

 シルバーアロー、マクラーレン・メルセデス。速いことは文句なく速い。しかも燃料をタップリ積んでいて速いのだから厭になる。

 ポールポジションのライコネンと予選2位のバトンとの差は0.4秒、3位アロンソとの差は0.5秒。タイヤは同じ。常識で考えればライコネンが他の二人より軽い重量、すなわち少ない量のガソリンで予選アタックしたはずなのだ。いわゆる“軽いタンク”というやつである。ホッケンハイムはフューエル・エフェクト(燃料重量効果)が大きいサーキットである。

 しかしそうでなかったことは1回目ピットインを見れば分かる。バトンのピットインが20周目、アロンソが22周目、なるほどアロンソの方がバトンより燃料を多く積んでいた。だとしたらライコネンはバトンの前、18周目くらいには給油しなければならない勘定になる。ところが実際にはアロンソの3周後の25周目。2位になったチームメイトのモントーヤに至ってはライコネンのさらに2周後だというのだから恐れ入る。

 とてつもなく燃費のいいエンジンがあればそんなこともできるのだろうが、それはありえない。マクラーレンの絶対速さが抜きん出ているのは空力性能、とりわけ強いダウンフォースであるらしい。トップメーカーのエンジン・パワーが高レベルで拮抗しているとすれば、勝負はそれをいかに路面に伝えるかにある。

 だが、その無敵のマクラーレン・メルセデスが勝てないのだから情けない……いや、面白い。面白いと言っては語弊があるが、レース後ライコネンが言ったように「これがモーターレーシングなのだ」。

 勝てない理由は何か。答はシンプル、トラブルとミスの多発だ。

 ライコネンをみると、今季初ポールポジションを獲ったサンマリノ、最終ラップの1コーナーまで独走していたヨーロッパ、そしてドイツが無得点。フランス、イギリスでは予選前にエンジンが壊れて換装。予選グリッドが10番下がって勝てるレースをそれぞれ2位、3位で終えている。この5戦のうち4戦で勝ったのがポイント・リーダーのアロンソ。ライコネンから逃げて行く運を着実にセッセと拾い集め、いまや36点もの大差をつけた。

 モントーヤにしてもテニス中に転んだとかで序盤2戦欠場。カナダではピットレーン・シグナル無視で失格。ドイツの予選ではポールポジション確実の走りを披露しながら、最終コーナーでスピン!クラッシュ。ノータイムで最後尾からのスタートとなった。これではライコネンとともにアロンソを抑え込めるはずもない。

 「コンストラクターズ・チャンピオンはまだ争えると思うけど、数字上の可能性は残っているにせよドライバーズ・チャンピオンは難しい」

 レース後、ライコネンは白旗を掲げた。

 業界随一のキラ星を抱えながらタイトルを奪えないマクラーレン。オールスター前の巨人はどんなポジションにいるのだろうか。

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