イチロー メジャー戦記2001BACK NUMBER

Did you know? 「初回、イチロー出塁で先制」の試合で負けなし。 

text by

木本大志

木本大志Taishi Kimoto

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2001/06/01 00:00

 Q. イチローが初回に出塁し、先制のホームを踏んだゲームでは、マリナーズは負けなしである。

 True or False? (正・誤)

 答えはTrue。本当である。5月28日現在、シアトル・マリナーズは49試合を消化。49試合中14試合、イチローは初回、先頭打者として出塁をしており、うち12試合で先制のホームを踏んでいる。そしてその12試合、すべてのゲームでマリナーズは勝利を収めている。

 偶然?そう受け止める人もいるだろう。確かにこのDATAだけで“イチローの勝利貢献度”を測るには客観性に欠ける。「イチローに有利なDATAだけを抽出した」、そう言われれば返す言葉がない。なるほどその通り。もう少し肉付けが必要だ。それならばと、こんなDATAを作ってみた。“今シーズンのメジャー全試合を対象。初回先制点と勝敗の行方”。このDATAとの組み合わせなら、イチローが初回に出塁し、先制のホームを踏むこととチームの勝利、その関連性、つまり貢献度に客観性を持たせられるかもしれない。

 今シーズンメジャーでは、5月28日現在、すでに742試合のゲームが行なわれた。うち、どちらかのチームが初回に先制点を挙げた試合は381試合を数える(半数以上!)。そして初回先制点を挙げたチームの勝率は259勝122敗で、なんと6割8分!というハイ・パーセンテージ。つまり初回に先制した、およそ7割ものチームが終始ゲームをコントロールしているということになる。マリナーズも例外ではない。マリナーズが初回に先制点を挙げたゲームは、イチローが絡んだ12試合を含め、計18試合。その勝敗は16勝2敗とやはり圧倒的。

 先手を取れば、試合をよりコントロールしやすくなる。冒頭で紹介したイチローのDATAもまた、まさにそのことを言わんとしている。全勝というのは出来過ぎだろうが、イチローの出塁が、今やマリナーズにとって、ゲームコントロールのカギを握っていることは疑いがない。そしてイチローが先制のホームを踏むことで、一気に主導権を引き寄せる。それがここまでのシーズン、勝ちに直結している。そこに偶然性は見られない。必然の結果。

「イチローを初回塁に出すこと、それだけは避けなければ」。ニューヨーク・ヤンキースの監督、ジョー・トーレがそう話していたのを覚えている。その通りになった、約2週間前の3連戦。マリナーズは1勝2敗と負け越した。

 敵将こそ、イチローのマリナーズ、勝利への貢献度を最も熟知していたのだろうか。

イチロー
シアトル・マリナーズ

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