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苦境のレアルを襲ったテロ騒動。 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2004/12/17 00:00

苦境のレアルを襲ったテロ騒動。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 サン・セバスチャンのガラ新聞社にテロ集団のETA(バスク祖国と自由)から電話があったのは、レアル・マドリー対レアル・ソシエダ戦がキック・オフして間もないころだった。「サンティアゴ・ベルナベウに仕掛けた爆弾が9時に爆発する」と。

 スペイン・バスク州のETAは独立国家をいまも望んでいる組織で、アルカイダとの繋がりもあるといわれている。アルカイダとETAから首都マドリッドが狙われているとは前々から噂されていた。これまでにもETAを批判してきた新聞記者や、爆弾をしかけていたところへ親切に声をかけた警官らが射殺されるなど、テロ事件は頻繁に起きてきた。怖い話だが、バスクでは車が爆発することなどよくあることだ。ほんの十数年前にはバルセロナにもスペインから独立する志を持った集団がいた。ある意味、バスクとカタルーニャが首都マドリッドに対する思いは、今も昔も変わらない。

 20時45分、ペレス会長は7万5000人の観衆から選手、ボールボーイらをベルナベウから避難させた。予告時間の7分前には、スタジアムは空となる。だが、爆弾は見つからなかった。88分に中断されたレアル・マドリー対レアル・ソシエダの試合は1月5日に延期され、1対1で迎えた残り7分間の続きを行う。だが、せっかくの冬休みもカットされる選手にしてみれば、たまったものではない。フィーゴなどは「出たくない」と口にしているという。

 こんなときは、ベルナベウから客足も遠のくのであるが、マドリスタも負けてはいない。爆弾騒ぎの数日後に行われたロナウドとジダンの「アミーゴ」が集ったチャリティー・マッチでは6万5000人がサンティアゴ・ベルナベウに訪れた。

 しかしながら、4年ぶりにバルセロナのパラウ・ブラウグラナで勝利をあげたのはバスケットのレアル・マドリーだが、その勢いはフットボールにはない。バルサに11ポイントの差をつけられてエスパニョール、バレンシアに次ぐ4位に甘んじている。スペイン人も、この状況を寂しくとらえている。とくにここ数年のチャンピオンズ・リーグではバルサ、ラ・コルーニャ、バレンシア、レアル・マドリーらがグループリーグを突破して、ベスト4までは残ってきた。レアルとバレンシアでファイナルを演じたこともあった。レアル・マドリーにもチャンピオンズ・リーグ優勝の可能性がないわけではないが、正直、バルサだけが頼みの綱といったところだ。

 フランス人も、レアルに噛みついた。バロンドールの候補リストにも名前があがらず、デビューして10年選手となったラウールをこきおろしたのは、フランス・フットボール誌だった。確かにこれまでのような輝きは失っている。キャプテンとして、レアルのシンボルとしてのラウールを不安に思う声もわからないではない。得意とするループシュートが出ないのも、得点王を取っていたシーズンとは異なる。汗かき役として、ロナウドのサポートをするばかりで、ゴール前で、ペナルティエリア内で仕事ができなくなっている。だから、ハーフラインまで顔を出すようになった。もともと、左サイド・ハーフでバルダーノに起用されたラウールだから、もう一度初心に返るのもいいだろう。今シーズンもジダンが負傷したとき、ロナウドとオーウェンを2トップに配置してラウールを左サイドに起用したことがある。しかし、ジダンがいるからこれまた複雑な問題が生じるわけで。ベッカムとジダンを中盤の底に、という手もあるけれども。

 バロンドールを受賞したのは、ACミランのシェフチェンコだった。2位、3位にはFCバルセロナのデコとロナウジーニョで、続いてアンリ、ザゴラキス、アドリアーノ、ネドベド、ルーニー、カルバリョ、ファン・ニステルローイらがベスト10に入っている。スペイン人は、最高でモリエンテスの17位というのが、なんだか寂しい。

レアル・マドリー

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