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2部でも大注目を浴びた往年の名勝負。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/10/29 00:00

2部でも大注目を浴びた往年の名勝負。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 1FCケルン対ボルシア・メンヘングラッドバッハの一戦と聞けば、70〜80年代のオールドファンには懐かしい響きが伝わってくる。66、70、74年と3つのワールドカップで代表チームの中核をなしていたのは、まさにこの2チームであり、これに進境著しいバイエルン・ミュンヘンが加わってドイツ黄金時代を築いたものだ。

 その後の3チームの栄枯盛衰はご存知のとおり。現在はバイエルンが一強独占時代を謳歌し、反対にケルンとボルシアMGは「1部では弱すぎ、2部だと強すぎる」微妙な位置に落ち着いている。

 しかし、そこは腐っても鯛である。いまだに根強い人気を誇るチームの対戦は大きな注目を集める。そういうわけで2部リーグ第10節の目玉はまさに「FC対MG」のライン・ダービーだったのだ。

 コンピューターが組み合わせを決めているので偶然だとは思うが、10節の一部の試合は近隣チームのシャルケ、ドルトムント、デュイスブルク、ビーレフェルトがすべてアウェーゲームで行なわれ、ボーフムだけがホームでバイエルンと対戦するスケジュールだった。そのため地元の関心は自然と2部のダービーマッチに集まった。

 月曜日の夜、しかも2部の試合。それでもスタジアムは5万4067人と超満員。マスコミは『切符がもっとあったら10万人が入っていた』と報じた。想像できますか、この熱気を?

 で、肝心の試合なのだが、MGはラファエル、ベーゲルントが負傷で、コンパーは半月板の手術で、シャハテンはリハビリ中で欠場。これだけでも戦力ダウンだというのに、元気なコウリバリーとゴホウリもメンバーから削除された。理由は「土曜日の夜、無断でディスコ遊びをしてきたから」。それも行き先はケルンというから穏やかじゃない。「もっとサッカーに集中しろ」とルーカイ監督が激怒するわけだ。

 エースのノイビルは前々日の練習で負傷したため、出場が危ぶまれていたが何とかコンディションを戻してフル出場した。試合はそのノイビルが57分にゴールを決めてMGが先制。3分後、FCが同点、さらに2分後に追加点を奪ってリードするも、3分後にMGのダエムスが根性の同点弾を放つ。

 いやはや、もう。8分間に4ゴールとはハラハラドキドキの真骨頂、いくら入場料が高くたって、こんなのを見てしまったら当分サッカー観戦を止められませんぜ。2−2の同点弾を打ったDFダエムスはディスコ事件でサスペンドされたゴホウリの代役だった。サクセスストーリーに付きもののエピソードはいっそう、心地よい余韻に誘ってくれる。

 結局試合はドローで終わったのだが、本論はここから始まります。お待ちどうさま♪

 目下の順位はMGが1位(勝点21)、FCが7位(15)。3位との勝点差は4だから、FCにも昇格に望みは十分ある。でも私はMGの昇格は期待できるが、FCはそうじゃないと感じている。

 FCは昨年11月にダウム監督が就任して以来、11人の選手を計400万ユーロで獲得してきたが、金額に見合った効果は出ていない。

 チーム内がしっくりといってない現状は不安をいっそう増幅させる。(1)練習中に選手同士が殴り合いの喧嘩を始めた(3回発生)。(2)練習試合の最中に宅配ピザを注文してスタンドまで配達させた。(3)移籍が決まった選手が試合でゴールを決めるや、それまでの不満をチームメイトにぶつけて彼らを挑発した。(4)上層部から食事の誘いを受けても、選手同士で連絡しあってスケジュールを中止させてしまった。こんなに不安材料があるチームって……。FCが一度も連勝を記録してないことも、これで納得である。

 FCは出場機会のない“喧嘩屋”DFアルパイ(元浦和レッズ)を解雇したいのだが、オベラート会長がなかなか首を縦に振らない。現役時代、熱血漢で知られた会長は自分と似たような血を引くアルパイに同情しているともっぱらの噂だ。これじゃ、他の選手の不満は抑えられない。

 対するMGはどうか。今年2月から指揮を取るルーカイ監督と選手の関係は良好。監督はレギュラーを固定せず、毎試合先発メンバーを代え、誰にでもチャンスを与えている。「だからこそ、『俺は必要とされているんだ』という気持ちになる」(MFンジェング)

 昨年まで18年間ずっとFC一筋にやってきて今季よりMGに移籍したDFフォイクトを始め、DFブロウワース、MFパーウベ、MFレスラー、FWフレンドら新加入選手はみんな、期待通りの活躍を見せている。チームがいかにハーモニーに溢れているかを知る証拠がある。ゴールを決めた選手がいつも真っ先にベンチへ駆け寄ってくるのだ。そして控え選手と一緒になって歓喜の輪を作る。いいなぁ、こういうのって。

 仲の良いのは選手・監督だけじゃない。チームとファンの関係もそうなのだ。MGは勝利で試合を終えるとサポーター席に向かって歩き、彼らと一緒に『フンバ、フンバ、テテラ』と合唱する。『フンバ』とは地元カーニバルで歌われる曲。よほど嬉しい場面でない限り、歌われることはない。それが今季は4節から9節まで6試合連続で歌われた。20年ぶりに聞く曲に涙したオールドファンもいた。

 指導、運営、応援、選手交代、すべてがうまく回っているMGには、新時代に突入した確かな手ごたえを感じる。日本人としては歴史的に関係の深い両チームだけに、どちらか一方に肩入れはできないが、それでもライバルのFCがもたつくことで、余計にMGが光って見えてしまうのだ。

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