MLB Column from USABACK NUMBER

ダニエル・カブレラ 映画『メジャーリーグ』式ノーコン矯正 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2007/04/18 00:00

ダニエル・カブレラ 映画『メジャーリーグ』式ノーコン矯正<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 野球コメディ映画の傑作、『メジャーリーグ』が公開されたのは、28年前のことだった。筋自体は、弱小チーム、インディアンスがリーグ優勝するという単純なものだったが、印象深い特異キャラが多数登場、いつ見返しても飽きない作りになっている。

 私にとって印象深いキャラの筆頭は、ブードゥー教信者の強打者ペドロ・セラノだ。カーブがまったく打てず、ロッカーにしつらえた祭壇で「カーブが打てますように」と、いつもブードゥーの神様にお祈りするのだが、この役を演じたデニス・ヘイスバートは、2000年代に入って、フォックスTVの大人気シリーズ『24』で、黒人大統領デイビッド・パーマーを演じた。「信仰の自由」を求めてキューバから亡命した野球選手が、テロリストとの闘いを指揮する名大統領に変身したのだから、「大出世」と言ってよい。

 次に忘れられないキャラが、刑務所出所と同時にキャンプ地に直行した剛速球投手リッキー・ボーンだ。99マイルの直球を放るのはいいのだが、球がどこに行くかわからないというノーコン投手、ついた仇名が荒れ球と素行不良の両方にちなんで「ワイルド・シング(Wild Thing)」だった。ボーンを演じたのはチャーリー・シーンだったが、高校では野球での大学進学を約束されたほどの好投手だったのに、素行不良で中退となり大学に進めなかったというから、「ワイルド・シング」を地で行っていたことになる。

 『メジャーリーグ』では、ボーンのノーコンの原因が極度の近眼にあったことが判明、眼鏡をかけるようになった途端にぽんぽんストライクが入る、という設定で、「そんな馬鹿な」と笑わせたものだったが、実際に、メジャーで視力を矯正した途端にノーコン病が治った投手がいるので紹介しよう。

 視力矯正でノーコン病が治った投手とは、オリオールズのダニエル・カブレラだが、これまでのノーコンの凄まじさは、以下に示す過去3年の与四球の数字からも明らかだろう。

与四球
2004年89(リーグ3位)
2005年87(リーグ3位)
2006年104(リーグ1位)

 カブレラが眼鏡をかけるようになったのは、昨年9月12日のレッドソックス戦が最初だったが、それまでの9イニング当たりの与四球5.62が、以後 3.26と激減、普通の投手並みのコントロールの良さを示すようになった。さらに、四球が減った効果か防御率も改善、昨季までの通算防御率4.75が今季は3.66と1点以上減ったのである(数字は4月15日現在。ちなみに、昨季終了後視力矯正手術を受け、いま眼鏡はかけていない)。

 カブレラ自身、「よく見えるようになったおかげで集中力が増した」と視力矯正の効果を認めているが、喜劇映画の「そんな馬鹿な」と呆れるような筋立てが、現実の世界で本当の物になってしまうのだから、世の中まったくわからないものである。

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