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Vol.3 庄司夕起 冷静なるシンデレラ 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2007/08/21 00:00

Vol.3 庄司夕起 冷静なるシンデレラ<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 新星が、初の大舞台で輝いた。今年全日本に初招集されたセンタープレーヤー・庄司夕起だ。ワールドグランプリ9戦中8試合で先発出場を果たし、大観衆の前でも1年目とは思えない安定したプレーを見せた。

 庄司自身、1年前には、今の自分の姿など想像もできなかった。

 全日本の前主将・吉原知子と同じ、北海道・妹背牛商高から2000年にパイオニアに入社して以降、長く控えの生活が続いた。ベテランの吉原、多治見麻子、2003年から3年間在籍したフランシーヌ・フールマン(オランダ代表)など、センターは層が厚く、出番は巡ってこなかった。それでも腐ることなく、意識の高いベテランたちの背中を見ながら黙々と努力を重ねた。

 「続けられたのは、やっぱりバレーがやりたかったから。いろいろ悔しい思いはありましたけど、それもすべて経験のうちというか、先につながるように、プラスにしていこうという気持ちでやってきました」

 そして'06−'07V・プレミアリーグで、新外国人選手の怪我により巡ってきたチャンスをものにし、レギュラーに定着。この春、全日本メンバーに抜擢された。

 とはいえ、今年の柳本ジャパンには、昨年の主力・杉山祥子、荒木絵里香に加え、V・プレミアリーグ優勝チームの久光製薬から先野久美子、大村加奈子、そして五輪に二度出場した多治見と、経験豊富なベテラン勢が顔を揃えた。北京五輪に向け、いよいよ出場権の争奪戦が始まる今年は、「計算できるチーム力を構築しなくてはいけない。そのためにはベテランの味というか、キャリアや技術を持った選手が必要」と柳本晶一監督。庄司が生き残る可能性はわずかに思えた。

 しかし、7月にロシアで行われたエリツィン杯で、庄司は途中出場からチャンスをつかみ、ワールドグランプリでの先発の座をたぐり寄せた。柳本監督は、「いろんな攻めのパターンを持っていて、しかもクレバーだから、それを瞬時の状況判断で使い分け、流れを作るきっかけになってくれている」と評価する。

 その庄司の攻撃面のよさが最も表れたのは、日本の最終戦となったロシア戦だろう。第1セットの中盤、庄司のブロード攻撃が見事にシャットアウトされた。ブロックしたロシアの主将・シャチコワ・リュボフは、「一人潰した」と言わんばかりに勝ち誇った表情を見せた。しかしその後、庄司は同じ過ちを繰り返さなかった。ブロックアウトを取ったり、2枚ブロックの間を抜くなどして、世界一の高さを誇るロシアのブロックを手玉に取った。

 「正面から力で挑んではダメなので、アタックの切り込みに変化を付けたり、ブロックを利用しようと考えながら打ちました」

 百戦錬磨のシャチコワが、ブロックの指先を狙われてイライラを募らせ、地団駄を踏んだ。

 後輩の活躍をベンチから見つめていた多治見は、こう話す。

 「V・プレミアリーグで今年試合に出始めた頃は波があったけど、今はコンスタントにパフォーマンスを発揮できている。(試合を)やればやるほど、すごく成長していて、ほんとに今伸び盛りの時期なんだなと思いますね。(パイオニアで)なかなか試合に出られなくて、普通ならモチベーションが下がってしまうところで、コツコツ積み重ねてきたからこそ、今につながっていると思います」

 それでも、庄司自身に満足している様子は微塵もない。大会中、「まだまだです」と何度口にしたことだろう。控えの生活から一気に日の当たる場所に出て、舞い上がっても不思議ではないが、常に淡々と自分を分析する。その冷静さこそが庄司の武器と言える。最終戦の後、こう語った。

 「まだまだやっていかなきゃいけないことがある。課題は、わかってはいたけれど、高さ。それに、連戦になるので体をしっかり作るのも大事。精神的な面でも、試合が続く中でコンディションを保てるようにしていかなくては。技術面も今よりもっとレベルアップしていきたいと思います」

 ワールドグランプリは、五輪に向けた新戦力の見極めという意味合いもあった。真のレギュラー獲得への戦いは、これからだ。

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