MLB Column from WestBACK NUMBER

日本球界の未来・・・・・・ 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYasushi Kikuchi

posted2005/02/28 00:00

日本球界の未来・・・・・・<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 ようやくメジャーのスプリング・トレーニングがフロリダ、アリゾナ両州で始まった。今年はまだ現地入りしていないが、次回以降からキャンプ地の生の情報をお届けしたいと思っている。

 今シーズンも新たに井口資仁選手、中村紀洋選手、藪恵壹投手、デニー友利投手が海を越えて、メジャー・キャンプに参加している。昨今、日本プロ球界の変革とともに注目されているのが、スター選手のメジャー移出問題だ。しかし、人々が考えているようにこのまま日本のプロ野球はスター選手を奪われ、メジャーリーグのマイナーリーグ的存在になってしまうのだろうか。

 先日、中村紀洋選手のドジャース入団会見に出席して、ある考えを感じ取ることができた。中村選手は近鉄入団当時の背番号「66」をつけ、ゼロからのスタートを強調し、笑顔のメジャー挑戦を印象づけた。しかし2002年オフにメッツとメジャー複数年契約でほぼ合意に達していたときとは異なり、今回は1年間のマイナー契約。40人のロースターにも入ることができず、招待選手枠でメジャー・キャンプに参加できる資格があるだけと厳しい条件が揃っている。普通に考えれば、「なぜそうまでして…」と勘ぐりたくなっても不自然ではない。

 「勝負しに来ました。お金じゃない。近鉄がなくなった時点で、日本での実績は捨てています。新たな気持ちで一花咲かせたい」

  「近鉄が残っていれば(ポスティングは)なかった。近鉄がなくなり野球人生を悔いないようにしたかった」

 しかし彼の入団会見での言葉を聞きながら、何かわだかまりが氷解していく感覚が過ぎった。中村選手の中には明らかな“近鉄愛”がある。3年前はメジャーと近鉄を比較した結果、近鉄への思いが強かった。しかし今回は近鉄が消滅したことで、メジャーの思いだけが残り、条件云々に拘ることなくメジャー挑戦に踏み切ったのだろう。

 実は、この思考は中村選手だけのものではなく、多くの選手に共通しているのではないかと感じている。タイガースの井川慶投手やジャイアンツの上原浩治投手らもメジャー挑戦を表明したのは、彼らを日本球界残留に向けさせるベクトルが弱まったことが原因なのではないか。つまり、日本球界の未来に魅力を抱けなくなっているのではないか。

 これはまさに我々実社会の縮図でもある。長年続く不況で能力主義、年俸制などが採用され、日本特有の「生涯雇用」が完全に崩れた現在、リスクはあるものの出来高に応じて高収入が期待できる外資系企業への人気が高まっている。もしバブル後も日本企業が揺るぎない力を誇示していたなら、外資系企業がここまで躍進していなかっただろう。

 昨年の球界再編問題は人々の関心を集め、今年は更なる変革へと向かうのか重要な時期を迎えている。だが一方で、昨年のゴタゴタでかなりの人々がプロ野球への魅力を失ったように、当の野球選手たちの中にも自分たちが働く“企業”に不信感を募らせている選手がいてもおかしくない。

 パ・リーグに3つの新チームが誕生したこともあり、ここまで連日キャンプ情報で賑わいを見せている。しかし、プロ野球界の変革に関しては徐々にトーンが下がってきてないだろうか。これからシーズンが開幕し、ファンが肌で感じ取れるようなアクションが起こらない限り、日本の政治ではないが「また同じか……」と、誰も振り向いてくれなくなるだろう。それはファンだけでなく、選手たちも同じ想いだということを忘れてはならない。そして選手たちと手を携えて、魅力あるプロ野球を復活させてほしい。

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