佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

チームのために 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2006/03/16 00:00

チームのために<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

「スタートからの話ですか?長くなりますよ(笑)」

 スーパーアグリF1での初レースを18位でフィニッシュした佐藤琢磨はレース後、レーシングスーツから真紅のTシャツに着替え、報道陣の前に笑いながら現れた。

 いままでその場に居た鈴木亜久里オーナーが「琢磨がなかなか来ないんでオレが代わりに長い時間喋っちゃったよ(笑)」と言いながら立って椅子を譲る。

 琢磨の表情はサッパリとしていた。それは「とにかくレースをフィニッシュしなくちゃいけないので後ろから来る速いマシンを気にしてミラーばっかり見てたんですけど、ミラーが見えにくいんですよ。それで精神的に凄く疲れました。でも体力的にはまったく疲れていない」からでもあった。

 佐藤琢磨4回目のフルF1シーズンは、これまでとはまったく違った幕開けとなった。昨年まではジョーダン・ホンダ(2002年)、BARホンダ(2004〜2005年)と中堅、トップチームでの参戦だったが、今年からは生まれたての新参チーム、スーパーアグリF1(SAF1)からの挑戦。周知の通り、チーム準備期間の短さからマシンは4年前のものを改造して使い、マシンのパフォーマンス不足は決定的。琢磨自身「コクピットに座って見る風景は、何回もラップ遅れにされる悲しいものになると思います」と語っていたがまさにその通り。20位からスタートした彼は完走こそしたものの、トップから4周遅れの18位。昨年までの開幕戦と丸っきり異なってレース中は他者と戦うどころではなく「順位争いではなく、最後まで走り切ることが大事でしたから1コーナー1コーナー大事に乗ることだけを考えた」1時間31分余の開幕戦だった。

 3月上旬、日本で発表会など様ざまなイベントを終えた琢磨は、イギリス経由で水曜日にバーレーンに入った。

 金曜日試走は、レギュラー・ドライバーで最高タイムを出したシューマッハーから5.8秒遅れの21位。予想通りとはいえ大差がついた。しかし新車のシェイクダウンであることを考えると、2時間で19周(チームメイトの井出は21周)できたことは悪くなかった。土曜日午前中試走ではさらに15周を加える。

 1時間で3セッション行う新方式の予選は、予想通り第1セッションで足切りされる下位6台の1台となり、クラッシュでノータイムとなったライコネンと21位井出有治の前、20位からのスタートとなった。

 「まずはキッチリ2台がグリッドに並べて嬉しい。明日はマクラーレンの前なのでいいとこ行けるかな(笑)」と冗談を飛ばした後、「レースを楽しみたいけど、しっかり走り切ることを目標にしたい」とターゲットを述べた。

 気温22度と、昨年より20度も涼しいコンディションとなった57周の決勝レースは、無線の故障に給油装置のトラブルが重なり「ドタバタのレース」(鈴木亜久里)となった。

 最初のピットストップ(18周)は井出と同時になり、給油しないままスルー。翌周給油したものの燃料が入ってなく、再びピットを目指し、ここまでで3回ピットイン。さらに「タイヤパンク」の警告灯が点いてピットイン(22周目)したもののこれは誤作動と判明。その後はまずまず順調で、残る2回の給油を終え、トップから4周遅れでチェッカーを受けた。中盤はタイムも安定、順調な走りだった。

 「チェッカーを受けられたのが嬉しいですね。チームのみんながピットウォールで入賞したみたいに喜んでいたので、ジージーと虫が鳴いてるような音がする壊れた無線で『ありがとう』を言いました。チームには100点上げたいけど、1台完走できなかったので80点かな。これでとりあえずスタートが切れました」

 「まずチームを強くするために走る」

 琢磨の第2戦は、1週間後のマレーシアである。

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