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U―20W杯でチビについて考えた。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2007/08/08 00:00

U―20W杯でチビについて考えた。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 チビ、チビっていうけど、チビって何センチからのことをいうんすか?170cmないとチビなんですか?

 はい。たぶん、世の中では170cm以下は小さい部類に入ります。日本人の平均身長は172cm前後だというから、チビッコ民族である。

 ちなみに世界一高い山はエベレストですが、平均身長が高い国はオランダ。男性の平均身長が180.4cmもあるんだとか。

 だからつい最近まで、いやいまでもいわれているのが、フィジカルの差が日本人の弱点だと。

 ところが、どっこい。

 カナダで行われたU―20W杯での日本代表からはそんなフィジカルの弱さは感じなかった。それどころか、デカければいいってもんでもないことを証明した国もある。

 アルゼンチンだ。

 U―20W杯で優勝したアルゼンチン代表のエース、アグエロは公称170cmというけれど、実際はもっと小粒。15歳1カ月3日でインデペンディエンテからプロ・デビューしたときは、もっともっと小さかったはずだ。そもそも彼は、あのチビの神であるマラドーナの最年少デビュー記録を塗り替えている。そして今大会、得点王とゴールデンブーツ(MVP)を獲得したチビ的英雄なのである。

 もっというと、アルゼンチンの主力という主力たちがチビッコだった。左のモラレス(ジャスト160cm!)と右のピアッティも160cm台、他にもゴメス、ディ・マリアといったチビッコMFが揃う。それでも、決勝戦では大型ぞろいのチェコをきりきり舞いさせた。

 左サイドバックのインスアも173cmとやや小柄だが、アルゼンチン人らしく胸板がたくましい。今年の1月に、リバプールがボカからレンタルで購入しただけはある。

 アイマール、サビオラ、メッシと、歴代U―20アルゼンチン代表はチビ祭りだ。これはもう、マラドーナの影響。チビでもできる。チビでもヒーローになれる。アルゼンチンでは選手も指導者も国民もチビに一目置いているのだ。

 日本にもその兆候はある。少し前、お相撲さんになるための条件として173cm以上というのがあったが、いまは多少緩やかになった。これはもう舞の海あってのことだろう。相撲界のマラドーナじゃないですか。

 他にもカッコいいスポーツ・チビはたくさんいる。格闘技の山本KID(160cm)や柔道家・野村忠宏(163cm)。彼らは小さくても、強いんです。

 といってもまぁ、日本のサッカー指導者は昔から「吉野屋フットボール」が好きである。早い、デカイ、うまい。そりゃ、足が速い、空中戦が強い、テクニカルであるのはイイ。使いやすいし。この好みに異論はない。オシムもソリマチもヨシダも、吉野屋的な選手をまんべんなく呼んでいる。

 でも、これからチビの時代がくる、と言いたい。たとえばU−20日本代表はデカいナイジェリアを上回った。ナイジェリアの選手のメンバー構成は異色だった。21人中、180cm台が6人。190cm台が7人。2m台が1人。そのナイジェリアに、日本は引き分けてグループリーグを1位で突破した。スコットランドもチェコも180cm台の集団だったけど、日本はフィジカルで負けてなかった。スバラシイ。

 今大会でもっとも平均身長が低かったのは北朝鮮。GKを除いて180cm台がひとりだけ。それでもグループリーグでは、ファイナルまで進んだチェコと2対2のドロー、アルゼンチンとは0対1の惜敗だった。

 そしてアルゼンチン。ずば抜けたチビッコはいなかったが、最高のチビ集団であったことは間違いない。まるで、近所のチビが体の大きなガキ大将に向かって行く──。そんなパワーを秘めていた。

 そんなわけでスペイン・リーグ新シーズン、フェルナンド・トーレスを放出したアトレティコ・マドリーで、アグエロは炸裂するんじゃなかろうか。

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