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変革者たちの2008年。 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph bySusumu Nagao

posted2008/12/16 00:00

変革者たちの2008年。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 毎年恒例、その年の世相を現す漢字に今年08年度は『変』が選ばれた。なんでも世界経済の大変動や、首相の相次ぐ交代、そしてオバマ次期大統領の名言『チェンジ』が由来だとか。

 格闘技界も今年を振り返ってみると『変』の一年だったと言える。

 まず、日本格闘技界の『変革』とばかりに3月に産声をあげた「DREAM」と「戦極」の存在は、今後の日本の格闘技界の行く末を占う意味でも重要なものとなった。昨年のPRIDEショックから人気凋落を続けてきた総合格闘技界にしてみれば、この業界再編は新たな秩序とヒエラルギーの誕生であり、未来への第一歩を記したといっていいだろう。今年は、初年度ながら団体の顔となるグランプリ王者誕生など様々な『変遷』を経てきたが、まだ選手の個性の確立や露出といった部分で全盛期ほど華やかではなく手探りの状態が続いている。とはいえ選手たちの実力と層は確実に厚くなっているので、あとは再ブレイクするきっかけを待つばかり。そこで重要なのは、やはりスター性なわけだが、こればかりは時期とタイミングを待つしかない。かつての桜庭和志のように、時代を『変化』させる選手の登場を待つばかりである。

 また、今年は過去に例のない『変異』とも呼べるイベントも開催された。

 それは、ケンカ自慢の若者やアマチュア、セミプロたちが集められ、前田日明がプロデュースした「THEOUTSIDER」である。荒唐無稽とも思えたイベントだったが、客入りも良く、話題にもなった。もちろんプロのような高いクオリティは求められないが、ルールなど安全面での整備などが優先され、大会は成功裏に終わった。不良が集まることから懸念されていた乱闘なども多少はあったというが大事にはいたらなかった。

 開催にあたってはもちろん賛否両論があったが、大会後はおおむね好意的に受け取られ、イベントは現在も継続的に行われている。いずれはプロの団体に出場のできる選手を輩出したいらしく、格闘技の裾野を広げるための新しい試みだったことであることには間違いなく、多かれ少なかれ波及効果もあったようだ。このあたりは常に新しいことを試み、格闘技界に『変乱』を呼び込んできた前田らしい。

 で、最後は、今年一番の『変人』のお話。

 今年の総合格闘技界MVPは誰になるかというと、その判断は難しい。DREAMでライト級王者になったヨアキム・ハンセンや、ミドル級王者のゲガール・ムサシでもいいのだが、どこか小粒な感じがしてならない。

 また柔道界の『変異』とも呼べる北京五輪金メダリストの石井慧も非常に話題になったが、まだデビュー前なので却下。

 となると、やはり思い出すのが秋山成勲の存在である。あの“ヌルヌル事件”以降、ブーイングも含め何をしていても気になる選手ということは間違いないだろう。昨年末に三崎和雄に顔面を派手に蹴っ飛ばされて以来、今年も何かと話題には事を欠かない。

 韓国で歌謡祭に参加し美声を披露し、マイケル・ジャクソン並の人気を博したかと思えば、7月のDREAM初参戦では柴田勝頼から一本勝ちで存在感をアピール。ちなみに、その試合はその大会の瞬間最高視聴率を記録した。さらに9月の試合で外岡真徳に圧勝(これも瞬間最高視聴率)すると、今度はリング上で「年末、吉田秀彦さんとやりたいです!」と他団体のエースを名指しして挑戦状を叩きつけるといったあんばい……。わが道をゆくKYなのは以前から分かっていたが、ここまでくると、次にどんな発言をするか楽しみになってくる。

 そんな発言に“DREAM愛”の強い青木真也は反発し、体重差もありリスクをおかし対戦を要求するのだが、秋山は全く歯牙にかけず、挙句の果てには「今年の年末はやめておきます」と、多くの選手が参加を望む「Dynamite!!」の参加を見送った……。うーん、この「変人」っぷりは……。

 けど、彼にとってみればこんなことや発言、普通で何の「変哲」もないことなんでしょうけどね。

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