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南アフリカW杯アジア最終予選 
VS.オーストラリア 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/02/16 00:00

南アフリカW杯アジア最終予選 VS.オーストラリア<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 試合終了の瞬間、頭を抱えて渋い顔を見せた岡田監督。憮然とした面持ちでピッチから引き上げてくる選手たち。まるで敗戦でも喫したかのようなその様子は、アウェーで勝ち点1を手にして満足そうな表情を見せるオーストラリアのピム・ファーベーク監督と対照的だった。

 2月11日、ワールドカップ(W杯)最終予選の4戦目。横浜・日産スタジアムでの対戦で日本が勝てば、最終予選A組最大のライバルを抑えて首位を奪うことができた。だが結果はスコアレスドロー。オーストラリアの首位も、勝ち点差2で日本が追う図式も、変えることはできなかった。

 日本は、終始試合の主導権を握っていた。じっくりとパスをつないで相手の穴が開くのを待つ。攻め急ぐあまりに足をすくわれることも少なくなかったこれまでの戦い方に比べれば、うまくコントロールされた試合運びだったと言える。

 しかも、中村俊輔、松井大輔、遠藤保仁、長谷部誠で構成された中盤は、お互いの動きに合わせてポジションを取り、玉田圭司、田中達也のFW陣との距離感もよかった。

 オーストラリアが仕掛けようとしたタイミングで、相手最終ラインの裏へ長いボールを出して田中達也を走らせるプレーは、相手の出足を止める上でも効果的だったし、サイドからの攻撃で、後半24分のFW大久保嘉人、同25分の遠藤などによるチャンスも作った。

 中でも、後半33分にDF長友佑都の左サイドからのクロスに合わせた玉田のヘディングと、同42分にDF内田篤人のクロスに反応した長谷部のボレーは決定的だった。残念ながら、玉田の試みは精度を欠いてバーを越え、長谷部の一撃は不運にも味方に当たってしまったが。

 しかし、こうした展開でも、オーストラリアに慌てた様子はまるでなかった。

 試合2日前に合流した欧州組がほとんどという中、選手の体調を考慮してか、オーストラリアは守備的な試合運びを選択。機会があれば攻めに転じようというスタンスで、前半は左サイドバックの長友が上がって空いたスペースを使おうと試みていた。中澤佑二、闘莉王の両センターバックを中心に日本の守備陣が上手く対応して、最終的にシュート3本、CK2本に抑えたのだが、オーストラリアは、それもこれも全てが想定内といわんばかりで、大きくバランスを崩すことはなかった。

 試合数日前に行われた会見での監督の発言も含めて、彼らにはチームとして相手にどうアプローチして何をすべきか、それを徹底できるだけの理解力と技量があると感じさせられた。それは、チームの成熟度の差とでも言えばよいのか。

 06年W杯の対戦でも2得点をあげたFWティム・ケーヒルは、「状況とゲームプランにあわせてプレーしている。今夜の結果はとてもうれしい。日本は予想通りに速いパス回しでワイドにプレーして、いろいろやってきたけど、ゴールがなかったね」と振り返り、指揮官は、「準備期間もほとんどなく、移動や時差を抱えた中で、選手は最大限のプレーをしてくれた。この結果は我々の予選突破に向けて大きな一歩だ」と話した。

 W杯最終予選の前半戦を終えて、日本はオーストラリアに勝ち点差2で2位につけている。悪くはない位置にいるが、現在できるだけのことをやって、この結果である。本大会で世界を驚かすようなサッカーをすることを目標にしているチームにとって、世界との詰めるべき差がまだまだあると言わざるを得ない。

 中村俊輔は、「相手の思い通り、引き分けになってしまった。あと一歩というところ。その一歩がとても大きいことなので、それをもっと感じながら詰めていかないと」と言い、長谷部も「紙一重の差」と話した。遠藤は「すべてにおいて底上げしていかないと。特にゴール前の攻撃」と課題を挙げた。取り損なった勝ち点の代わりに、埋めるべき差についての認識を深めたことが収穫か。

 岡田監督は、「これぐらいの相手には十分通用すると思った。もっと精度を追求していかなければならない。予選というプレッシャーのかかる試合こそ、進歩できる最高の機会」と言った。次の最終予選は3月28日。埼玉でバーレーンと対戦する。世界との差を縮めていくための試合を期待したい。

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