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“プロレス化”するベルギーリーグ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byAFLO

posted2005/05/27 00:00

 “ザ・ジャイアント・アメリカン”なんていうプロレスラーのようなあだ名をつけられたDFがスタンダール・リェージュにいる。

 オグチ・オニェウ、23歳。USA代表。ナイジェリア系アメリカ人。

 オニェウの両親はナイジェリア人だが、両親がアメリカに移住したためにアメリカで生まれ育った。この身長192cmの大型DFが、最近イングランドのクラブから大きな注目を集めている。

 アメリカでプレーしていたオニェウが、ヨーロッパのクラブに来たのは2002年のことだった。アメリカのユース代表でプレーしていたオニェウを、フランスのFCメツが目をつけたのだ。翌シーズンにはベルギーのラ・ルビエールにレンタル移籍し、そして今季ベルギーの名門・スタンダールにやって来た。今季からはアメリカのA代表のレギュラーに定着して、W杯予選で活躍している。

 身長が192cmと聞くと「ジャイアントっていうほどじゃないのでは?」と思ってしまうが、実際のプレーを見るとオニェウは想像以上にでかく感じる。サッカー選手だった父から恵まれた身体能力を受け継ぎ、とにかく速くて、高い。セットプレーのときは野獣のようにジャンプし、UEFAカップのビルバオ戦でもヘディングで1ゴールを決めた。プレースタイルは、“プロレスラー”そのものだ。

 オニェウは言う。

 「身長とフィジカルが、自分の最大の武器。ロナウジーニョのようなテクニックはないけど、それぞれの武器を発揮するのがサッカーだからね」

 今季のスタンダールは、このオニェウを筆頭に新加入組がおおいにリーグを盛り上げた。1998年に元アディタス会長のロバート・ルイス-ドレイフス氏がチームの役員になってから、スタンダールは大型補強路線を推し進めている。今季は元ポルトガル代表MFのセルジオ・コンセイソンがチームの中心となり、ギニア代表のバンゴウラ(23歳)は得点ランキングの3位(第33節時点)に入って周囲を驚かせた。来季にはポルトガル代表FWのヌーノ・ゴメスを獲得するという噂もある。

 現在、ベルギーリーグでは、各チームの個性化が進んでいる。今季2位のアンデルレヒトは大型トレーニングセンターを建設中で、若手育成に力を入れている。その中からコンパニーやファンデン・ボーレが頭角を現してきた。一方、今季優勝したクラブ・ブルージュは、東欧圏の選手を獲得してチーム力を上げた。スロバニア代表MFのチェフ、クロアチア代表FWのバラバンらの貢献は大きい。

 また中堅クラブでは、ベベーレンがコートジボワールのアカデミーと提携し、保有選手の約9割がコートジボワール人という異常な事態になっている。だが、その攻撃的なスタイルを評価するファンは多い。移民が多いベルギーでは、こんなチームでさえも許されてしまう土壌があるのだ。

 有料放送でプレミアリーグやセリエAが簡単に見られるようになった現在では、ベルギーのような小国のリーグを盛り上げるには、各チームが個性を作りあげて、戦いの構図をわかりやすくするしかない。そう、それはまるでアメリカン・プロレスのような―――。

 ベルギーリーグは、中小クラブ経営の実験場のようになってきた。じっと目を凝らしてみれば、ベルギーからサッカー・クラブの未来像が見えてくるかもしれない。

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