カンポをめぐる狂想曲BACK NUMBER

From:徳島「帰路で味わった不思議気分」 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byShigeki Sugiyama

posted2005/01/27 00:00

From:徳島「帰路で味わった不思議気分」<Number Web> photograph by Shigeki Sugiyama

旅にはへーと驚く瞬間がある。今までの自分が

知りえなかった発見。これこそ旅の醍醐味だ。

徳島ヴォルティスからの帰り道、それは起こった。

 徳島をめぐる旅の締めくくりは祖谷渓谷。奥祖谷かずら橋、小便小僧……。日本三大秘境に数えられる絶景を、まさに独り占めした後、僕はJR土讃線の大歩危駅に向かった。高知行きの特急列車「南風(なんぷう)」に乗るために。

 高知に用事はない。これ以上ブラブラしていると罰が当たるというわけで、真っ直ぐ羽田を目指したのだが、奥祖谷から高知空港(写真)経由で東京に戻ることを決めた時、というか、それが最短ルートであることを知った時、僕はへーと少しばかり驚き、感激させられた。徳島県にいるのに、どうして最寄り空港が高知なのか。香川県の高松空港もまた、徳島空港より近い距離にある点も、不思議な気分に輪を掛けた。

 「行き」にも新鮮な体験していた。東京〜徳島間は、飛行機を利用するのが一般的ながら、パソコンを検索した結果導き出された以下のようなルートに、僕は俄然興味が湧いたのだった。東京〜新神戸〜徳島。東京から「のぞみ」で新神戸に行き、そこで高速バスに乗り換え、明石海峡、鳴門海峡をまたいで走る阪神淡路鳴門高速自動車道で徳島に向かう。新神戸からの所要時間はわずか1時間50分。ヴォルティス徳島のホームスタジアムがある鳴門へは、そこからマイナス20分の道のりだ。「四国」「徳島」と聞くと、つい遠くの場所を連想するが、実は案外そうでもないことが、陸路を時間を掛けて旅したことで実感できるとは驚きである。

 旅には発見がある。旅行代理店の担当者でも知らないことや、ガイドブックをめくっても出ていない真実を知り、へーと驚く瞬間こそが、旅の醍醐味だと僕は思う。

 大久保で一躍有名になったマヨルカの場合は「ドイツ」だ。島はまさにドイツ人だらけ。レストランのメニューにも、ドイツ語は必ず載っているし、パルマ空港にも、ドイツ語のアナウンスは当たり前のように流れている。実際、到着する飛行機は、ドイツ発の便ばかり。2年前ほどに「ソン・モッシュ」で行われたスペイン対ドイツの親善試合も、詰めかけた観客の3分の2はドイツ人だった。マヨルカはドイツ領であったとしても不思議はない一風変わった島なのだ。

 当然、ドイツ発のフライトは数多い。料金も安い。エアーベルリンという航空会社の便には、100ユーロ以下の設定はざらにある。ハンブルクで高原を見た後、マヨルカで大久保を見る。あるいはその逆のパターンは、それぞれの試合が土日に分かれていれば十分に可能というわけだ。日本から単純にマヨルカに向かう場合にも、いったんスペインに入りそこかマヨルカへ向かうより、東京?フランクフルト(ミュンヘン)?マヨルカの方が効率は良い。近々、旅行シーズンが幕を開ける学生さんは、知っておくべき知識である。

 「関空発」も知っておきたい旅のテクニックだ。成田発が満席だと、東京周辺に住む大抵の人は、出発日をずらしがちだが、そんな時は、関空発(あるいは名古屋発)も探ってみたい。羽田?関空?欧州。出発日が直前に決まることが多い僕は、この手をしばしば使っている。

 1年数ヶ月後に迫ったドイツW杯の観戦にも盲点はある。ドイツにホテルが取れない場合は、隣国オランダから通うという手がある。W杯料金のドイツとは違い、宿の値段も標準的であるはず。ケルン、ゲルゼンキルヘン、ドルトムント辺りなら、試合の時間によっては、日帰りは十分可能だ。車があればベリーイージーになる。

 徳島は徳島空港、東京人にとっての日本発は成田発、マヨルカはスペイン、2006年W杯はドイツ。国と地域にまつわる固定観念は、ちょっとものを斜めに見ると揺るぐ場合が往々にしてある。

 そしてそれは、2月9日の日本対北朝鮮戦にも通じるような気がする。北朝鮮のスタンドを占めるのは、ほぼ100%何十年も日本で暮らしている在日朝鮮人だ。本国・北朝鮮から大挙、押しかけるわけではない。彼らのメンタリティは、日本人とそう変わらないはず。普段は知人であり、友人だ。中には常々、日本代表を応援している人がいたとしても不思議はない。つまりスタンドの模様は「日本人」対「日本人に限りなく近い人」の戦いになる。複雑であり奇妙な戦いだ。入場ゲートに、金属探知器を設けなければならないほど物騒な試合だとは思わない。

 その昔、ハラヒロミ選手の幸運な決勝点で日本が勝った試合を、僕は国立のスタンドで観戦しているが、あの時のスタンドの光景は、いまなお忘れることができない。僕の周囲にいた日本人だとばっかり思っていた人たちが、突然に北朝鮮の旗を振り出した瞬間、なんだこれはと、全ての常識がひっくり返りそうなくらい仰天した。今回の舞台は埼玉。埼玉は埼玉でも、実は東京からかなり離れた埼玉で、僕の家から電車で1時間半は有に掛かる辺地にある。ポジティブに考えれば、これも旅と言えば旅になる。旅先で、メディアであまり報じられない独自のビックリが体験できればしめたものだ。

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