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メジャーが本当に負けた相手 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/04/26 07:00

メジャーが本当に負けた相手<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、第1回大会につづいて日本の連覇で幕を閉じた。

 この結果には、ちょっとおどろいた。

 というのも、アメリカがもうすこし本気を出すだろうと思っていたからだ。アメリカは、第1回大会では2次ラウンドでメキシコに負け、ベスト4にも進出できなかった。同じ轍を踏んだのでは、主催者としてみっともなかろう(WBCは大リーグと大リーグ選手会が主催している)。

 また、ドミニカなども黙っていないだろうと思っていた。ドミニカは、アレックス・ロドリゲスをはじめとして、大リーグで最高クラスの年俸を取る選手ばかりを揃えた、まさにドリームチームだった。

アメリカもドミニカもあっさり負けて……

 しかし、最後の決勝に残ったのはアメリカでもドミニカでもなく、彼らにくらべればごくわずかの年俸しか取っていない極東の2カ国、日本と韓国の選手たちだった。アメリカは2次ラウンドは何とか突破したが、準決勝で日本に手もなくひねられ、ドミニカにいたってはオランダのアマチュア選手たちにいいようにあしらわれて2次ラウンドさえ突破できなかったのである。

 すべてが終わったいま、よくよく考えてみると、主催者の大リーグと大リーグ選手会は、彼らの配下の大リーガーたちに最初から全力でのプレーを望んでいなかったのである。

 投手の投球数制限は、まさにその象徴といっていいだろう。1人の投手は、1次ラウンドでは70球、2次ラウンドでは85球、準決勝と決勝では100球までしか投げられない。また、1試合で50球以上投げた場合は、つぎの登板まで中4日を空けなければならないとか、準決勝で30球以上投げた投手は決勝に登板できないということにもなっていた。それは練習試合にも及び、本大会前の日本とオーストラリアの試合で、松坂大輔は所属するレッドソックスの指示で38球で降板している。

 たしかに大リーグでは、普段のペナントレースでも先発投手には100球前後しか投げさせないし、クローザーにも3連投以上はさせない。そのほうが投手の肩に負担がかからず、長いペナントレースを戦うのに有利になるという合理的な考えからだ。

投球数制限はどうしてここまで厳しくなったのか?

 しかし、WBCでの投球数制限は、それとはまったくちがう思惑から生まれたものらしい。日本や韓国の選手はどうしているのか知らないが、高額年俸の大リーガーたちには、大会期間中に故障した場合に備えて保険がかけられている。もし故障した場合、大損をするのは高額の10億、20億という年俸を補償しなければならない保険会社ということになる。そこで、保険会社が補償を引き受ける条件として、前回大会同様に投球数の制限を要求したというのだ。

 つまり、アメリカやドミニカの高給取りたちは、大リーグ選手会、それに保険会社から、故障しても補償はしないぞというルールを設けられて大会に出ていたのである。故障の危険があるようなプレーは最初からするなということだ。

「真の世界一決定戦なら投球数制限など不要」

 と主張して、韓国とともに大真面目になって向かって行った日本とは、初めからちがう姿勢で臨んでいたのだ。

 ようするに、2連覇におどろいたぼくが愚かだったのである。

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