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イングランドに怪しげな“オイルマネー”が参入。~真の狙いは南ア利権?~ 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAction Images/AFLO

posted2009/10/06 11:30

イングランドに怪しげな“オイルマネー”が参入。~真の狙いは南ア利権?~<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

4部ノッツ・カウンティのディレクターに就任し、会見に臨んだエリクソン。キャンベルにかわる大物選手を入団させることはできるのか?

顧問は保険詐欺の前科が。脛に傷持つ新経営陣の計画とは。

 それにしても、プレミア昇格を目指すのであれば、もっと上位のクラブを買収する方法もあったはずだ。敢えてカウンティに手を出した新経営陣の真の狙いは一体何なのか。

 実は、クラブを買収した『Munto Finance』も、その親会社である『Qadbak』も、投資家の一部である中東の富豪2家族の名前を公表した以外は、詳細をまったく明かしていない。なにしろディレクターのエリクソンでさえ「オーナーと面識はない」というのだから、選手のキャンベルがオーナーの正体を知る由もない。秘密のベールに包まれた組織なのだ。

 一方で、新経営陣の顧問役が保険詐欺の前科者であるという事実がマスコミによって暴かれている。キャンベルが、来夏にW杯が開催される南アフリカで、同国の鉱物資源の採掘権を狙う親会社のプロモーションに一役買うことになっていたという事実も明らかになっている。キャンベルの給料には、不透明な経営母体の宣伝マンとしてのギャランティも含まれていたのだ。

 サッカーというスポーツや、カウンティというクラブ自体に興味があるとは思えない新オーナーは、次のようなシナリオを描いていたのだろう。健全なイメージのあるフットボールクラブの経営者に納まり、有名な選手や監督をうまく使って第三世界での天然資源を手中に収める。莫大な利益の一部を還元すれば、地元民とクラブも、環境と順位の改善という恩恵を受ける──。

さらなる大物獲得に成功しても、チームの昇格は……。

 だが、プロリーグの底辺からプレミアに上り詰めることは、アフリカ大陸の地面を掘り下げることよりもはるかに難しい。いまだにエリクソンは「資金は十分にある」と、キャンベルに代わる大物獲得を画策しているが、得体の知れぬオーナーが所有する4部のクラブに身を投じる一線級など滅多にいるものではない。つい先日も、昨年に現役を引退したアンディ・コール(元マンU/イングランド代表など)に復帰要請を断わられたばかりだ。代役を見つけたとしても、サラリーの格差が100倍以上もある他のチームメイトたちとの間に、昇格に不可欠なチームスピリットが生れるとは思えない。

 2~4部を運営するフットボールリーグは、この一件を問題視しており、10月8日の定例会議で、灰色のオーナー交代の是非に結論を下す見込みだ。

 仮にクラブの目論見通り新体制が承認されても、チームの見通しは依然として暗い。数年後、運よくカウンティの投資家たちが南アフリカでダイアモンドを掘り当てたとしても、カウンティの選手たちがプレミアという金脈に辿り着くことは残念ながら極めて厳しいだろう。

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