佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

もったいない! 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2005/09/14 00:00

もったいない!<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 「もったいない……」

 レースが終った後、ホンダの中本修平エンジニアリング・ディレクターはウメくような声でそう言った。

 序盤6位を走行。ピットストップでウエット・タイヤからドライ・タイヤに換え、これがドライバーの判断ミスで翌周再びウエット・タイヤに履き替える余分なピットストップがあって佐藤琢磨はいったん11位まで後退する。しかし、その後ろにいたバトンが最終的に3位に入ったことを思えば、関係者、そしてファンの想いは中本エンジニアと同じく「もったいなかったな……」だろう。

 14周目にかかるストレートをシューマッハーに次ぐ11番手で戻って来た琢磨は、1コーナーでシューマッハーの急減速を避け切れず追突。シューマッハーともどもリタイアとなってしまったのだ。

 「ボクとシューマッハーはジョーダンを抜きにかかっていたのですが、僕は右にピットウォール、左にジョーダン、前にシューマッハーと囲まれてしまい、行き場を失ってしまった。それにシューマッハーが驚くほど早くブレーキングしたのですぐにブレーキをかけたのですが間に合わず、フロントホイールがロックアップしてしまって、外に逃げようとしたのですが舵が利かず接触してしまいました」と、琢磨。

 「行き場を失ったのはそうなのでしょう。であれば、早目にブレーキングして立ち上がりで勝負することを考えるべきだったんじゃないかな」と、中本エンジニアは手厳しい。

 オープニングラップの琢磨はすばらしかった。

 10番手の決していいとはいえない位置からダッシュ。動き出しは周囲のライバル達と同じだったが、1コーナーのブレーキングで大外からウエーバーをパス。スパ-フランコルシャン名物のオールージュでバトンを抜き、バックストレッチエンドではマッサを料理。ピット前に戻る手前のバスストップ・シケインではコースオフしながらもラルフのインをこじ開け、なんと6位にジャンプアップ。久々に見る琢磨の“斬レ”だった。周りがよく見えていたのだろう。

 その後も「オーバーステアが出て苦しかった」と言いながらチームメイトのバトンを徐々に引き離し、セーフティカーが出る直前にはクラッシュしたフィジケラの4秒前を走っていたのだ。タラ……レバ……は言いっこなしにしても、2位アロンソを食えていたかもしれないレースだった。

 ただ、シューマッハーが早目のブレーキングをしたことは、彼の履くブリヂストン・ドライ・タイヤが温まりにくく、初期グリップが出にくいことからじゅうぶん想像できる。

 終ったことは終ったこととしても、痛いのは次戦ブラジルで予選グリッド10番降格のペナルティを受けたことだ。同じようなケースで審議対象になったピッツォニアが罰金(8000ドル)だったことを考えると、琢磨も罰金ですまなかったのかという疑問は残る。

 ブラジルは日本グランプリにつながる大事なレース。決勝でひとつでもポジションを上げて、鈴鹿の予選発進順位ができる限り後ろになるよう祈るばかりである。

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