岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER

アジア杯最終予選 
VS.イエメン 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2009/01/23 00:00

アジア杯最終予選 VS.イエメン<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 「本当はあまり手を打ちたくなかったんですが……」。後半15分のFW巻誠一郎の投入について、岡田武史監督はそう振り返った。少し残念そうな響きがした、その一言に、日本代表監督がこの試合に抱いていた期待と、それが実現できなかった悔しさとが混在していたように思う。

 1月20日に行われたアジアカップ予選第1戦。日程の関係で、欧州組も、MF遠藤保仁やDF中澤佑二といった国内レギュラー組も招集できず、国際試合経験の浅いメンバーで臨んだ2009年の初試合において、日本はイエメンに2-1で辛勝した。

 「代表戦を戦うというチャンスを生かせる選手が出てくれば、チームには大きなプラスになる」と、試合前日に岡田監督は話していた。手詰まりになった攻撃を打開する策は、ピッチ上の選手たちが見つけて欲しい。岡田監督がそう考えていたことが分かる。

 ところが現実は、前半7分の先制点こそ、サイドの揺さぶりを含めた立ち上がりからの一連の攻撃で得たが、その後は単調な攻めに。しかも、開始早々の混乱から立ち直りつつある相手ディフェンスが守備を固めてきているにもかかわらず、中央突破に偏った展開で、結果的に自らリズムを崩していった。

 この内容に消化不良感を覚えたのは、指揮官だけでなく、熊本KKウィングスタジアムを埋めた3万人超のファンもテレビ中継を観ていたファンも同じだっただろう。

 しかも、後半開始早々にはFKから、イエメンのこの日唯一のシュートで同点弾を決められた。MF香川真司が不用意にボールを失ったところからドリブルで右サイドを攻め込まれ、DF駒野友一がファウルで止めて与えたセットプレーだったが、FKが放り込まれたところでの、ゴール前の相手マークへの対応も甘かった。攻め続けていた日本が、突然の展開についていけずズルズルと失点した、という印象だ。

 先発メンバーのうち、代表での出場試合数6試合以下が7人という構成では、MF中村憲剛やFW田中達也が奮闘したとしても、この状況は無理からぬことなのかもしれない。しかし、それにしても攻守ともに寂しい内容だった。

 「自分たちで解決できそうになかったので」と、岡田監督は巻投入の意図を説明し、「彼が飛び込んでくれることで、相手はだいぶ混乱した。彼の持つプレー経験はこういう試合で助かる」と、代表戦36試合目となった千葉FWのプレーを賞賛した。

 実際、巻が入ったあとに再び攻撃の流れが生まれた日本は、66分にFW岡崎慎司のヘディングをファーサイドにいた田中達也が押し込んで勝ち越し点を奪っている。

 辛勝ながらも予選という公式戦で白星を得ることはできた。岡田監督は「これで、代表戦の厳しさが分かったのでは」と、若手がこの試合で得たものを強調した。

 さらにプラス材料を挙げるならば、岡崎の身体能力の高さと得点感覚の鋭さを改めて確認できたことか。田中達也と同様に、ひたむきで献身的なプレーはチームに欠かせないものになってきた。もう少し精度があれば、あと2本ぐらい決められただろう。今後が楽しみな存在だ。

 1月28日に行われるバーレーンとの予選第2戦では、遠藤やFW玉田圭司らレギュラー組の数名がスコッドに戻り、メンバーが入れ替わる。若手は20日の試合で得た「経験」を今後にどう生かすのか。また、チームとして、浮き彫りになった課題をどう克服するのか。それらのポイントが、今後のチームの行方を左右するのは言うまでもない。

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