MLB Column from USABACK NUMBER

最強ドジャースの失速と
マニー・ラミレスの「スランプ」。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images

posted2009/09/12 08:00

最強ドジャースの失速とマニー・ラミレスの「スランプ」。<Number Web> photograph by Getty Images

「スランプ」のラミレスだけでは打線に不安があったドジャースは、ホワイトソックスからトレードでジム・トーミを獲得。トーミは大リーグ歴代12位の通算564本塁打を打っており、ラミレスと計1100発超のコンビが誕生するが…。

 前半戦、圧倒的な強さを誇ったドジャースが失速、後半戦は「並み」のチームになってしまった。

 前半戦終了時点で56勝32敗(勝率6割3分6厘)と、メジャー・ベストの戦績を誇っていたのに、以後、26勝25敗と5割を1勝上回っているだけなのである(数字は9月7日現在)。

 快調に飛ばしていたドジャースがなぜ失速してしまったのか、以下、前・後半別に戦力を比較してみよう。

 まず、投手。チーム防御率は前半戦の3.58(リーグ2位)に対して、後半戦は3.24(同1位)と、戦績が落ち込んでいるのとは反対に改善している。

 一方、打線は、前半戦のチームOPS(出塁率と長打率の和)7割6分6厘(同3位)に対し、後半戦は7割3分5厘(同10位)と大きく落ち込んだが、その最大の原因は、主砲マニー・ラミレスの予想外のスランプにあった。

 ラミレスが薬剤規定違反で出場停止となった50試合(5月7日~7月2日)、ドジャースは29勝21敗と踏ん張り、主砲欠場の影響を最小限に食い止めた。「後半戦、ラミレスが戻ってきたら、ドジャースは手がつけられなくなるほど強くなる」と予想された所以(ゆえん)である。

 しかし、予想とは裏腹に、前半戦のOPS11割5分6厘に対し、後半戦は8割2分2厘と、戻ってきたラミレスは「並み」の打者に変わってしまっていた。そして、ラミレスのスランプに引きずられるかのように、打線全体も当たりが止まってしまったのである。

ラミレスの成績に依存しきっていたドジャース。

 昨季、ラミレスがドジャースに加わったのは、トレード期限ぎりぎりの7月31日だった。それ以後、ドジャースの戦績は、ラミレスのバットが火を噴くかどうかに依存してきた。たとえば、移籍前は勝率5割ちょうどと、まさしく「並み」のチームだったのに、ラミレスの打棒(移籍後OPS12割3分2厘)に引っ張られてリーグ選手権に進出するまでの強豪チームに変貌した。

 しかも、非常に興味深いことに、ラミレスの打撃成績は、ドーピングによる出場停止処分を受けた前後で大きく変動、ドジャースの戦績も併せて変動した。

 下表にラミレスのここ3年の打撃成績を三つの時期に分けて示したが、ドジャースに移籍してから出場停止処分を受けるまでの期間、「神がかり的」と言っていいほどの打棒を振るったことがおわかりいただけるだろう。そして、ドーピングが露見、出場停止処分を受けた途端に、この「神がかり的」打棒が消え、移籍前のレベルに戻ってしまったことも。

マニー・ラミレスの打撃成績(最近3年間)
  試合数 打率 長打率 OPS
2006年8月16日-2008年7月31日 239 0.296 0.509 0.925
2008年8月1日-出場停止処分 80 0.380 0.710 1.200
出場停止処分以後 57 0.284 0.521 0.897

 以上をまとめると、

「ラミレス獲得後、ドジャースの戦績はその打棒に依存してきた」

 ことは明らかだが、さらに、打撃成績の大きな変動とドーピング露見のタイミングを考えたとき、

「ラミレスの打撃成績は薬剤使用に依存した」

 ことが強く示唆されるのである。

 ここで単純に三段論法を当てはめると

「ドジャースの戦績は、ラミレスの薬剤使用に依存してきた」

 という結論が導かれるのだが……。

マニー・ラミレス
ロサンゼルス・ドジャース

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