MLB Column from WestBACK NUMBER

ブレーブスで2度蘇ったフランコ 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/08/02 00:00

ブレーブスで2度蘇ったフランコ<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 メジャー現役最年長のフリオ・フランコ選手が、「引退」という崖っぷちから見事に蘇った。7月12日にメッツを解雇されたものの、6日後の同18日にブレーブスと再契約に成功、今季の現役続行が保証されたのだ。8月23日で49歳になる(あくまで公称だが)フランコ選手は引退を考えていたらしい。

 「ボビー(コックス監督)なら自分のことを理解しているし、自分を生かしてくれる起用法を知っているから、ブレーブス以外は考えられなかった。他のチームにいったら、結局はメッツと同じように出場機会がないだろうからね。ブレーブスと契約できなかったら故郷のドミニカに帰るつもりだった。帰るというのは引退という意味だ」

 確かに解雇されるまでメッツでは出場機会がかなり制限されていた。もちろんカルロス・デルガド選手という絶対的な存在とポジションが被ってしまうのだから仕方がないことではあるのだが、今季は決して本調子でないデルガド選手の成績を考えると、もう少し出場機会を与えられても良かったのではと考えたくもなる。

 「もちろん失望感を味わっていた。選手なら誰だってプレーしたい。自分は出場する機会を与えられれば、まだプレーできるということを証明できる自信はあったけど、ベンチにいては何もできないからね」

 メッツでは50試合に出場したが先発はわずか6試合だけ。完全な代打要員だったが、打率は1割台に低迷、まったく自分の調子を掴めなかったようだ。ところがブレーブスと契約した翌日にはいきなりの先発出場、ここまで(7月31日現在)10試合中9試合に先発出場している。7月23日のジャイアンツ戦に先発し、2安打を放つ活躍を見た試合後、コックス監督は満面の笑みをたたえて以下のように話した。

 「オールド・ガイ(フランコ選手のことです)はいいスイングをしていた。これなら当分は先発で使っていけるだろう」

 フランコ選手の読みは見事に的中。コックス監督はフランコ選手への信頼感を失っていなかった。現在、フランコ選手はプレーする喜びを日々満喫している。

 実はブレーブスがフランコ選手を“蘇生”させたのは今回が2回目になる。1998年に千葉ロッテに2度目の在籍をした後、フランコ選手と契約するメジャーのチームは現れなかった。その後メキシコ・リーグ、韓国、メキシコ・リーグと渡り歩き、メジャーの打席に立ったのは1999年のわずか1度だけ。そんなフランコ選手を2001年にメキシコ・リーグから呼び戻し、プレーさせる機会を与えてくれたのがブレーブスだった。そして2006年にメッツと2年契約を結ぶまでの4年半の間在籍し、再び選手としての輝きを取り戻した。

 「フリオはフリオだからね。彼はこのチームでの役割を理解している。(メッツでは自分の役割に)対応していなかったけど、ここでは完全に馴染んでいるよ」

 ブレーブスがフランコ選手との契約を発表した際、チッパー・ジョーンズ選手は、フランコ選手の活躍を疑おうとしなかった。ブレーブス時代にフランコ選手のたゆまぬ努力を見てきた人間だからこそ、メッツでの不振が決して年齢的なものが要因ではないと理解していたからだろう。

 6月にドジャー・スタジアムでメッツ3連戦を取材した時のことだった。この時は一度も出場機会がなかったフランコ選手だが、試合後は毎日欠かさず若手選手に混じってトレーニングに向かっていた。以前から聞いていたのだが、フランコ選手の野球に対する真摯な姿勢というものを改めて確認することができた一場面だった。

 「自分の夢は50歳までメジャーでプレーすること。自信はある。あとはどうなるか乞うご期待というところかな」

 頭髪や髭にかなり白いものが目立ちながらも、フランコ選手はさわやかに笑いかけた。以前にこの場でも紹介したことがあるが、一部には実年齢は50歳を超えているという証言もある。いずれにせよ現時点でも野手(投手ではサッチェル・ページ氏の59歳がメジャー記録)としてメジャー史上最高齢選手であるフランコ選手。ぜひ彼の夢が現実になるように祈っている。

 と、このコラムを仕上げている最中に、レンジャーズのマーク・テシェイラ選手のブレーブスへのトレードが決まり、8月1日にロースター枠を空けるためフランコ選手が再び解雇された。だが他チームと再契約できなくても9月からブレーブスに再合流できるということだ。依然として崖っぷちは続くようだが、とにかく頑張ってほしい。

MLBの前後の記事

ページトップ