佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER

イギリスGPで実現した父子対面。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/07/16 00:00

イギリスGPで実現した父子対面。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 前半戦フライアウェイの最後第7戦カナダが終わり、今後の展望を問われた中嶋一貴は「ヨーロッパ・ラウンドからが勝負だと思います。スピードをいかに上げられるかが課題です」と答えていた。

 第8戦フランスのマニ-クール、第9戦イギリスのシルバーストンともに走り慣れたサーキットであり、GP2などでの実戦経験もある。とりわけシルバーストンはウィリアムズ・トヨタ・チームにとってお膝元だけに、空力のアップデート・キット投入も予定している。予選ではチームメイトのニコ・ロズベルグをベンチマークに、決勝はハイポイント・スコアを狙って中嶋一貴の新たなる挑戦が始まった。

 ヨーロッパに戻っての緒戦マニ-クール(フランス)は、予選16位、決勝15位に終わった。元々ウィリアムズのマシンは、マニ-クールやシルバーストンのように起伏が少なく、路面がスムーズなサーキットに向かない傾向がある。それは一貴ばかりでなく、ロズベルグでさえも決勝16位に終わったことで証明されよう。また一貴は、給油作戦がうまく行かなかった不運もあった。彼の給油は70周レースの35周目。当然このままで走り切れると誰もが思ったが、なんと58周目にもう一度ピットストップ。チームは1回給油で走り続けるより2回給油にしたほうがマシンが軽くトータルで速いと考えたようなのだが、疑問が残る采配だった。

 その2週間後のイギリスには、父・中嶋悟氏がTVの解説者として来場。スターティング・グリッドで息子・一貴にインタビューする一幕があった。悟氏は今季第2戦マレーシアにも行ったが、あくまでもスタンドからの観戦で、パドックに足を運んだのはこのシルバーストンが初めて。親子ともども照れがあったようで、人目につく場所での会話は少なかった。一貴は苦笑しながら「(父とは)レースが終わったらどうやって一緒にロンドンに行くか、その話しかしていません」と言う。

 予選はQ1が15位とギリギリの通過。Q2は15人中最下位でスターティング・グリッドは15位。チームメイトのロズベルグがQ1・18位でQ2にさえ進めなかったことを考えると、いかにウィリアムズ・トヨタとサーキットとのマッチングが悪いかが分かろうというもの。

 しかし、マシンの不足を気まぐれなブリティッシュ・ウェザーが補ってくれた。60周レースの20周目から本格的に降り出した雨は、ますます強くなるいっぽう。そこでウィリアムズ・トヨタ陣営は35周目に一貴をピットに呼び入れ、雨晴れ兼用のスタンダード・ウェット・タイヤ(浅溝)から、荒天用のエクストリーム・ウェット・タイヤ(深溝)に交換。一貴はとたんに水を得た魚のようにライバルより10秒近く速いラップタイムで周回。一時、最後尾の17位まで落ちていたものの、残り12周時点では7位まで浮上し、アロンソ、コバライネン、トゥルーリらとひと塊になっての5位争いを展開。最終ラップにトゥルーリに抜かれて8位に落ちはしたが“御前試合”で見事今季4回目のポイントゲットを果たし、合計ポイント(8点)でロズベルグと並んだ。

 「チームからは無線で“後ろのヤルノに抜かれるな”という指示が来ましたが、前(のアロンソ、コバライネン)に近づくと自分のペースで走れなくなってしまって、そのへんがこれからの課題だと思います」と、兜の緒を締めた。

 次戦ホッケンハイム(7月20日)は2年ぶりの開催。ウィリアムズ・トヨタとは必ずしも相性のいいサーキットとは言えないが、また雨が降らないとも限らない。いよいよ本格的なサマーシーズンの訪れである。

中嶋一貴
中嶋悟
ニコ・ロズベルグ

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