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From:ポルト(ポルトガル)「楽しい強行軍」 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byShigeki Sugiyama

posted2004/06/22 00:00

From:ポルト(ポルトガル)「楽しい強行軍」<Number Web> photograph by Shigeki Sugiyama

「サッカーは戦争だ」なんて過去の話。

ポルトガルの優しい空気に包まれて、

ユーロ2004はお祭りムードでいっぱいだ。

 ポルトガルは暑い。30度を軽く超える真夏の陽気が続いている。湿度が日本ほど高くはないので、日陰に入ればそよぐ風が心地良く感じられるが、日向に出ると地獄だ。カンカン照りの直射日光を30分も浴びていると、日射病で倒れそうになる。おまけにポルトガルは急坂が多い。マックとウインドウズ各1台入りの重量感のあるバックを抱えて上りを歩くと、息は途端にハーハーし始め、額が汗でじっとり濡れる。そんな中で、毎日移動&毎日観戦の強行軍を強いられると、泣きたい気分になってくる……というのは真っ赤な嘘で、元気は俄然湧いてくる。と同時に、日韓両国を計6往復した2002年W杯がとても懐かしく感じられる。あの時に比べればまだまだと、この職業ならではの快感に、ハイテンションは増進する。脳はしきりにアドレナリンの分泌を促すのだ。

 この調子で、大会の取材を無事終了すれば、高水準の達成感が得られること請け合いだ。これからもスポーツライターとしてやっていく自信が一層ついているに違いない。過去の経験はそう語る。このユーロに五輪、W杯を加えた世界的な集中大会のフルカバーは、これが19度目。しかし、ベテランの気分はない。回数は重ねているが、その度にとても新鮮な感覚に浸れる。いつでも初出場のようなワクワク、ドキドキ感がある。

 国も違えば、街も違う。毎回、異なる舞台の地図上を、右往左往しているからそう感じるのだろう。お馴染みではない分だけ、スリルがある。アゴ足つきではないフリーランスの身の上であるということも輪をかける。旅の手配は全て僕。できれば経費は安く抑えたい。だから旅行代理店の新米社員より、あるいは経験の浅い旅ライターより、いろいろなことをよく知っている、多分。グルメだなんて言うつもりはさらさらないけれど、あちこちの美味しいレストランもよく知っている。

 だから何さと突っ込まれると、答えに窮するが、少なくともジコマン度はかなり高い。ジコマン・コンテストに出たら、相当上位に食い込めるハズだ。だから、たまに「スギヤマさんのようなライターになりたいんですけれど……」なんて、声をかけられると、必ずや、こんなフレーズが頭を過ぎる。「やれるもんならやってみれば」

 逆に、こういう大会に常時参加している似たような職業の人たちには一目も二目も置く。その大変さは痛いほどよく分かる。しかし、その大変さを大変と感じるより、面白く感じる量が勝るからこそ続けて取材にやってくるのだ。変な奴といえば変な奴。そう思いたくなる人がここにはたくさんいる。ユーロ2004と大層な名は付いているが、所詮は球蹴り。僕らも所詮は球蹴りライターだ。そんなんで、食べて行けちゃって良いワケ? と思う自分も確実に存在する。この世界はずいぶん能天気だ。

 スタンドの様子にも、それは当てはまる。今大会はいつにも増して平和な空気に包まれている。対戦相手の国家が流れている時に、ブーイングをしたのはドイツ戦でのオランダぐらい。現地には、お祭りムードが色濃く反映されている。「サッカーは戦争だ」は過去の話。娯楽の範囲にしっかり収まっている。

 舞台がポルトガルであることも輪をかける。この国の人は本当に優しい。人々の殺気や苛々を和ます、柔らかなムードに溢れた癒し系。強行軍の道中には、ホッとさせられる瞬間が必ずある。風景も食事もベリーグッド。観光客に娯楽を提供するスポットがあちこちにある。だから多少暑くたって文句はない。これで、10年後でも思い出すような好試合に出くわすことができれば最高の展開だ。

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