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田澤の活躍が球界にもたらす影響とは。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/03/17 00:00

田澤の活躍が球界にもたらす影響とは。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 これらのコメントからは、田澤投手が試行錯誤の日々を繰り返しながら、彼なりにメジャー球で体験する変化をそのまま受け入れ、そこから自分の投球を組み立てようとしている柔軟性が垣間見られないだろうか。

 これまで海を渡ってきた日本人投手たちは、日本のプロ野球界で自分の確固たる投球術、投球理念を確立してきた選手ばかりだったといっていい。そこで未経験のメジャー球を使用しながらも、なんとか日本同様の投球をしたいと考えるから、多少なりとも壁にぶつかってしまう。もちろんどんな投手でも毎年のように改良、工夫を加えながら成長を続けているのだが、成功した自分の中枢部分をも変えようとするのは難しいことだ。それが田澤投手の場合は、これからメジャー球を使いながら自分の投球を確立しようとしている状態だ。やはり若く、未経験な選手だけに、選手としての“伸びしろ”が、これまでのベテラン日本人投手とは比較にならないほど大きいということなのだ。

 田澤投手と似たような思考法だったのが、レッドソックスに入ったばかりの大家友和投手だったように思う。彼もこちらに来てから、メジャー球に対応しながらツーシーム(・ファーストボール)やカッターというメジャー主流の球種を習得し、新たな投球を作り上げていき成功した選手だった。

 現在も首脳陣の期待を上回る投球を続け、メジャー・キャンプに帯同している田沢投手。彼が本当の意味で自分が納得する投球が完成した時、どれほどの投手になるのか楽しみでならない。一方で彼の将来的な成功は、前述通り日米球界に変化をもたらさざるを得ず、メジャー球界の食指がプロ選手同様にドラフト有望選手にも伸びることになる。そういった意味でも、田澤投手の今後は、否応なしに注目されていくのだろう。

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田澤純一
ボストン・レッドソックス

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