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南アフリカW杯アジア3次予選 VS.タイ 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2008/02/12 00:00

南アフリカW杯アジア3次予選 VS.タイ<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

 「ワールドカップ(W杯)予選は簡単にはいかないと感じた」。

 2010年ワールドカップ南アフリカ大会へ向けて、予選初戦となるタイ戦を4−1の勝利で終えた直後、岡田武史監督の口から最初に出たのは反省の言葉だった。

 ケガと出場停止でレギュラー4人を欠くタイだったが、組織的に守備を固めて日本のプレースペースを消してきた。

 前半21分にMF遠藤保仁がFKを直接決めてリードしたのも束の間、その1分後にFWティーラテープ・ウィノータイにミドルシュートを決められて同点にされた。

 相手の守りに苦労しながらようやく奪った先制点に、日本はどこかほっとしたところがあったのかもしれない。日本ゴール後のリスタートから、あっという間の出来事だった。

 「1点取れて楽になると思っていたが甘かった」と岡田監督は振り返る。

 それまでも、決して日本のプレーが悪かったわけではなかったが、前半は相手の陣形を崩すような動きが足りず、時間を追うごとに中距離から狙うシュートが増えていた。

 ハーフタイムで「動かないのは相手の思う壺」と言われて動き方の指示を受けた選手は、後半早々から効果を見せる。特に、遠藤とMF中村憲剛には縦へ仕掛けようという動きがよく出ていたように感じられた。そして、それに上手く呼応した形で生まれたのが、均衡を破るFW大久保嘉人の54分のゴールだった。

 中盤からの長いボールに反応して左サイドからMF山瀬功治が中へ切れ込んだ。相手選手にボールを取られたが、相手のクリアボールがペナルティエリア左にいた中村に当たり、はじかれたボールは綺麗なクロスとなってゴール前に上がった。そのボールに反応した大久保が走りこんでゴールへ押し込んだ。

 その後、64分に相手が2枚目の警告で1人退場になる幸運もあり、日本は圧倒的なボールキープで攻め続け、66分には中村のFKにDF中澤祐二が頭で合わせて3−1、ロスタイムに交替出場のFW巻誠一郎が遠藤のCKをダイビングヘッドで決めて4点目を奪った。

 岡田監督は4点のうち、流れからのゴールは1点だけだったと不満顔だったが、得点につながるセットプレーを得たのは、いずれも前へ向かうパフォーマンスからだった。

 1点目の遠藤のFKは、試合早々から相手の裏や空いたスペースを狙って動いていた大久保が倒されて得たものであり、3点目もサイドを攻め上がったDF駒野友一へのファウルでゲットした。4点目は、再び駒野が攻め上がって打ったシュートが相手ディフェンスに当たって得たCKだった。

 点を取りたいと思ってやっていたという大久保は、「くるかなと思って。たまたま(あの場所に)いた」と言ったが、問題は“その時”そこにいることができるかだ。

 この試合、中盤に下がったりサイドに流れたりしてボールを受けようとしすぎて、岡田監督に「お前が動いたら誰が点をとるんだよ」と言われていたことがあるにせよ、泥臭くゴールを意識し、嗅覚を働かせたプレーは評価すべきだろう。

 ジーコ監督時代の'06年W杯予選では1次のシンガポール戦1試合に交替出場したのみで、本大会のメンバーにも選ばれなかった25歳の元マジョルカFWだが、ようやく活躍の機会が回ってきたようだ。

 チーム全体にも、大きなサイドチェンジや前の選手を追い越して攻撃に参加する動きが、後半は前2試合よりもスムーズで効果的に出ていた。一方で、失点の場面はいただけなかったが、初戦でW杯予選の怖さを感じるには十分だったのではないだろうか。

 1998年W杯予選からこれまで3大会の予選と本戦を経験しているGK川口能活は言った。「まだ岡田監督になって3試合しかしていないので、チームの成熟度という点ではまだ。でも試合をすることで高めていける。勝ち点3はよかったが、もっとよくなるように、プレーの精度を上げてやれるようにしたい」。

 日本は2月17日からの東アジア選手権を経て、次のW杯予選となるバーレーン戦(3月26日、於マナマ)に臨む。

岡田武史
中村憲剛
山瀬功治
川口能活
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