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イスタンブールの陣、がっぷり四つの好望か。 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byMichi Ishijima

posted2005/05/17 00:00

イスタンブールの陣、がっぷり四つの好望か。<Number Web> photograph by Michi Ishijima

 決勝戦が迫ってきた。準決勝でPSVに大苦戦したミラン。準々決勝でユーヴェ、準決勝でチェルシーを破り、勢いに乗るリバプール。対照的な両チームの顔合わせだ。

 総合力で上回るミラン相手に、リバプールがその差をどこまで詰められるか。見所を一口で言えばそうなる。強者対弱者の関係は、割合ハッキリしている。10人に聞けば、7、8人はミラン優位と答えるだろう。しかし、下馬評が、試合内容にそのまま反映するとは思えない。優位の内訳は、せいぜい60対40。70対30の関係にはならないはずだ。逆に、僕は50対50、競った試合になるだろうと予想する。

 持てる100の力のうち、80しか発揮できないのがミラン。逆に、持てる80の力をフルに発揮しそうなのがリバプール。言い換えれば、ミランは内包するエネルギーを100%相手に圧力として伝え切ることができにくいが、リバプールには効率よく100%伝えきる術がある。これこそが、接戦必至と踏む最大の理由だ。

 準決勝のミラン対PSV戦が、まさにそんな一戦だった。ミランはなぜPSVに苦戦したか。PSVが善戦したからといえば、それまでだが、ミランが持てる力を100%発揮していなかったことも事実。正確に言えば、PSVが持てる力を100%発揮すると、ミランは80%しか出ない仕組みが出来上がっていた。これと同じことが決勝戦にも当てはまる気がしてならない。

 実際リバプールは、準々決勝のユーヴェ戦、準決勝のチェルシー戦で、強者相手にそうした試合を演じている。エネルギーを100%圧力として相手に伝えきることに成功したリバプールに対し、2つの強者は、せいぜい70%にとどまった。

 いやいや、リバプールは守ってばかりいたじゃないか。特に、それぞれの第2戦は、相手の圧力を受けっぱなしだったじゃないかと、反論される方も多かろう。確かに相手ゴールに何度も詰め寄っていたかと言えばノーになる。そうした意味においては、100%のエネルギーを相手に伝えきったとは言えない。しかし、ボールを奪う作業は完璧だった。けっして引かずに、できるだけ高い位置でボールを奪うプレッシングは利いていた。奪った後、人数を掛けずに攻めただけの話だ。強者に対してリードを奪えば、それも当然。同点、あるいはリードを奪われている状況ならば、キチンと相手ゴールを目指したに違いない。事実、ユーヴェ戦の第1戦、チェルシー戦の第1戦後半の戦いに、構造的にそれが可能なことは十分示されていた。決勝のミラン戦でも、立ち上がりから、リバプールは確実に攻めてくるだろう。ボール支配率は互角、むしろリバプールの方が上回るとさえ思う。

 このあたりのからくりは、アジアチャンピオンズリーグの山東対横浜戦を引き合いに出せば、一目瞭然になる。その第2戦、横浜は、那須のゴールで先制すると守った。守ってカウンターという作戦に出た。リバプールとの違いは、プレスの意識だ。横浜はとにかく引いて守った。ボールも奪う位置も低かった。ボールを奪っても相手ゴールは遠く、攻撃は典型的なクリスマスツリー型を描いた。その結果、山東のサイドからの攻撃をもろに受けた。山東は中央に比べ抵抗値が遙かに低いサイドを巧みに利用し、自らの力を100%横浜に伝えきることに成功した。両者の力関係は、横浜100対山東80。にもかかわらず、横浜は敗れた。自らの力を、引いてしまったことにより、70しか出せなかった。

 これは横浜に限った話ではない。日本代表が弱者相手に苦戦する図式とも共通する。100の力を60、70しか出せずにいる日本代表に対し、オマーン、北朝鮮、バーレーンらは、60しかない力を100%出し切ることに成功している。

 ミランの陣形も、時にクリスマスツリー型に陥る。対するリバプールにその傾向はない。だが、ミランにはカカー、シェフチェンコという抜けた力のアタッカーがいる。非効率をスーパースターの個人技で解消する強者ならではの凄みがある。それにもし、カフーのサイドアタックが決まり出すようなことになれば、非効率はずいぶん解消される。リバプールの左、リーセとトラオレが、カフーの攻め上がりをどう封じるか。それが完璧にできれば、リバプールは互角以上の戦いが挑めるに違いない。

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