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悪童カッサーノが大ピンチ。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2008/03/13 00:00

悪童カッサーノが大ピンチ。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 3月2日のトリノ戦で主審を侮辱する態度を示したサンプドリアのFWカッサーノが、5試合の出場停止処分を科された。この“事件”は、EURO2008に向かってチームづくりを進めるイタリア代表に大きな衝撃を与えることになった。

 「カッサーノの代表復帰はもはや絶望的」

 わがまま勝手な態度は問題視されるが、プレー面では紛れもなく代表の風格を漂わせているカッサーノだけに、イタリアサッカー協会の幹部も困惑を隠せなかった。

 カッサーノがアズーリに復帰する予兆は十分あった。

 スペインで空白の季節を送っていた彼は、新天地のサンプドリアでブレイク。シーズン序盤はケガにも悩まされたが、後半はフィジカルコンディションが向上。長所を最大限に生かしたプレーを見せ、そのパフォーマンスは非の打ち所がなかった。悪態でさえ、2003年5月31日のイタリア杯以来、特に見られず、精神的な成長も伺えた。

 天性のパスセンスと高い得点能力を誇る若きストライカーの復活は、EUROでの覇権奪回を狙うイタリア代表にとって大きな収穫だった。ドナドニ監督もキーマンとして大きな期待を寄せ、代表復帰も確実視されていた。ところが今回のリーグ戦長期出場停止で、カッサーノはチームと融合を果たす貴重な機会である3月26日のスペイン代表との親善試合出場はおろか、代表メンバー当落線上に立たされたのである。

 イタリア代表がカッサーノを必要とする理由は何か。

 W杯優勝組の一部に新たなメンバーを加えて船出した新生アズーリだったが、FWトッティに代わるトリッキーなプレイヤーがいないことがチームの柔軟さを欠く一因となっていた。複数のポジションをこなせるFWを起用することで、戦況に柔軟に対応できるチーム構築を試みてきたドナドニ監督ではあるが、彼が目指す流動的なサッカーを完成させるにはカッサーノの才能を借りるしかない。ドナドニ流が、いくら中盤でのボール支配率を高めて主導権を握ろうとするスタイルであっても、フィニッシュの「仕事人」、つまりFWの重要性は変わらないのである。そう考えると、クアリャレッラ、ディ・ナターレのように大イベントでの経験に乏しい新人ストライカーに大役を押し付けたり、ベテランのインザーギに執着するより、ゴールへのつなぎ役として効果的なパスを配球でき、かつ得点能力も高いカッサーノの起用は効果も大であることがわかる。

 EUROでは、初戦から強豪ルーマニア、オランダ、さらに宿敵フランスとの熾烈なバトルを控えているアズーリだけに、悪童が良薬になることを国民も信じている。

 そんな期待に水をさす要因ともなった「カッサナータ(カッサーノの大人気ない態度を指す新語)」について、カッサーノ自身はこう語っている。

 「サッカーが好きだからこそ、自然体になってしまう」

 好きなサッカーにのめり込みすぎて興奮してしまう、というのが彼の言い分だ。一見過激なカッサーノのパフォーマンスを、ぜひとも欧州チャンピオンを狙うアズーリの武器にしたいところだが果たして……。

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