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モウリーニョ語録。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byAri Takahashi

posted2008/10/14 00:00

モウリーニョ語録。<Number Web> photograph by Ari Takahashi

 私は毎朝、スポーツ2紙と全国紙、それに無料で配布される大衆紙2つを読む。そして頁を捲りながら「MOURINHO」という文字の多さに驚かされる。これは過剰ともいえる伊メディアのモウリーニョ報道によるもので、モウリーニョ監督がインテルを率いて以来、紙面上にもブラウン管にも同監督の名が絶えることはない。こうした現状から、イタリアでモウリーニョ監督が大ブレイクしていることに気づく。

 リーグ連覇を至上命令とするインテルの指揮官だからこそ、露出も高いのだろう。それにしても、これほどまでに伊メディアに関心を抱かれる外国人監督も稀である。彼自身が「私は格別(スペシャル・ワン)」と尊大な台詞を堂々と口にするように、モウリーニョ監督の優れた選手操縦術とバランス感覚は魅力的である。だが、伊メディアがどっぷりと惚れ込んだ最大の理由は、指揮官の人心掌握術にある。巧みな話術とお茶目な性格が報道陣に受けた。

 トラパットーニ、カペッロ、リッピ、エリクソンなど、かつてセリエAで栄光をもたらせた偉大、且つ口達者な指導者たちが国内リーグから去り、ACミランにて長きに渡る名将アンチェロッティのジョークにもそろそろ飽きがきたことで、新たな「餌食」を求めていた伊メディア。当初は、「スペシャル・ワン」の弱点をあぶりだすように新監督に寄り添った報道陣だが、モウリーニョの話術の巧みさに、まんまと手玉にとられてしまった。数日前、モウリーニョ語録をクイズにして記事を掲載した「ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト」に笑いを覚えたように、欧州屈指の有力スポーツ紙も「これでもか」とモウリーニョ関連の紙面展開に尽力している。伊メディアによる異常なまでのモウリーニョへの関心。これがモウリーニョ・ブームを引き起こした。

 注目度と人気は格別のモウリーニョ監督でも、采配に目を移すと、彼が得意とする戦略法(失点を抑えて勝利を得る)が100%ピッチで体現されているとは言い難い。インテルはセリエA6試合を消化した時点で順位こそは3位だが、9得点5失点が詰めの甘さを物語っている(因みに首位のラツィオは14得点7失点、2位のウディネーゼは10得点で失点はわずか3)。さらにインテルはリーグ序盤で黒星(対ミラン戦)を喫し、欧州チャンピオンズリーグ今季初のホーム戦ではW.ブレーメンに1−1で引き分けるなど、チェルシー時代から薫陶とする常勝主義にも陰りが見え始めてきたといえよう。

 戦術重視でバラエティに富んだ戦い方を主流とするセリエAにあって、就任当初から「不変のスタンス」を主張した指揮官。だが、いざ蓋を開けてみると「カメレオン式」とも言える変わり様。ころころと変化するシステムに選手たちは目的を遂行できないように思える。要するに今季序盤のインテルにはリスクの多いサッカーが目立ち、王者の風格が漂う気配がない。ところがモウリーニョ監督は悠然と語る。「リーグ制覇において、19クラブの現状を把握する必要はない。大切なのは強敵であるローマ、ミラン、ユベントス戦に勝ち、これら3チームより上位につけていること」

 次節(10月19日)はローマとの対戦。指揮官に言わせれば「決戦」である。仮にインテルが宿敵に勝つことができなければ、おのずから番狂わせも生じてくる。指揮官が就任会見の席で開口一番、「セリエAを面白くするのが私の役目」と宣言したのを思い出した。リーグ優勝候補最有力のインテルがなかなか独走態勢に入れないのだとすると、モウリーニョの言葉どおり今季のセリエAは確かに面白くなる。

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