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近代サッカーの思わぬ副産物。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byMarcaMedia/AFLO

posted2008/11/25 00:00

近代サッカーの思わぬ副産物。<Number Web> photograph by MarcaMedia/AFLO

 レアル・マドリーのデラレッドは心臓に問題を抱えていると、ラジオ番組に出演した同クラブのカルデロン会長が洩らしてしまった。

 デラレッドは10月30日に行われた国王杯レアル・ウニオン対レアル・マドリーの真っ最中、突然倒れた。味方の攻撃に参加して敵ゴール前まで上がったところ、ボールがゴールラインを割ったので、自陣へ戻るべく歩き出した。そこで何かにつまずくようにして、まず膝を折り、次に顔から芝へ突っ伏した。カメラが寄ると、両目は大きく開かれたまま。気絶しているのは明らかだった。

 ピッチの外に運び出された後、意識は戻り、大事には至らなかったが、その後の情報は「様々な検査を受けている」ぐらいしかなかった。そこにカルデロン会長の暴露である。デラレッド本人にプレッシャーをかけないよう秘密にしてあったという話もあるし、「何がどう悪いのかハッキリするまで、メディカルスタッフは何も言わない」と自分で説明したにも拘わらず、ぺろりと失言だ。

 試合中の失神と心臓疾患ときたら、思い出すのは昨年急逝したセビージャのプエルタ。彼も試合中に意識を失い、ばたりと倒れた。その後、失神と蘇生を繰り返し、結局帰らぬ人となった。直接的な原因は不整脈だったが、それを起こしたのは心臓の病気──右室異形成──だった。

 デラレッドの失神は当初「労作性のもの(運動によって誘発された)」と発表されたが、カルデロン会長の言葉を信じるならば、事の大本はプエルタと同じ心臓にある可能性が高い。そうなると、非常に気になるのが詳しい病状だ。

 今年8月に出版された「アントニオ・プエルタの謎──多くのスポーツ選手が突然死するのはなぜか」という本の中で、スポーツ心臓学の権威アラセリ・ボライタ医師は、アスリートの心臓が最近、未知の方向へ変化していると語っている。

 「80年代の終わりには観察されなかったことを、いまわたしたちは目にしています。原因はトレーニング方法や習慣の変化。選手の身体が常にオーバーワークの状態にあるからです。不整脈に関しても同様で、かつてなかったものを目にしますし、なぜだかわかりませんが、発生自体が増えています」

 プエルタの“異形成”ひとつ取り上げても、まだわからないことが多いという。そして、彼のように運動中に命を落とすアスリートは、スペインには毎年20人ほどいる(11月23日にも22歳の若者がサッカーの試合中に亡くなった)。それを考えると、デラレッドは復帰どころではなくなる。

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