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カターニャの“ハエ作戦”。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

PROFILE

posted2008/10/24 00:00

 カターニャにとって因縁のシチリアダービーでの完封勝利は千金に値したに違いない。宿敵パレルモを2−0で下して勝ち点を14に伸ばし、創立以来初のセリエA2位(同ポイントのウディネーゼ、ナポリとタイ)という快挙も成し遂げた。常々「三流」のレッテルを貼られたクラブが、現時点では欧州チャンピオンズリーグ本大会(以下CL)出場圏内であるのも、ゼンガ監督の卓抜した指導力の賜物にも感じる。

 予想を遥かに上回る成績にゼンガ監督も思わず絶句、考えた末に口から飛び出た言葉は「いま、リーグを閉幕してくれ」だった。仮に指揮官の無理な願いが叶ったとすれば、カターニャはインテルとともに欧州チャンピオンズリーグ本大会(以下CL)に出場することになる。目ぼしい代表選手を擁さないチームがヨーロッパの超一流クラブと対戦。行儀の悪いサポーターが埋め尽くすマッシミーノスタジアムにてCLの「聖歌」がこだまする最高のシチュエーション。果たして、神のいたずらのような椿事がカターニャに起こるのだろうか?今はリーグも序盤に位置づけられる時期であるため、ここでは「夢は大きく」に留めることにする。

 現時点でのカターニャの成績(4勝1敗1引き分け)から、チームが奮闘していることに疑いはないのだが、シュートがなかなか決まらないなど決定的な場面での仕事は成功率が低い。FWパオルッチの3ゴールは際立っているものの、チームが誇るゲームメーカーのFWマスカラは今ひとつ精彩さを欠く点や、パレルモ戦でフル出場したFW森本だって2度の決定機を逃す失態は、FWの数は豊富でもアタック陣にキレがないことを露呈している。

 死角ばかりで、なぜ勝てる。

 カターニャの強さの秘密を勘ぐる中、ライバルに敗れたパレルモのザンパリーニ会長の発言に答えがあることに気づいた。

 「選手たちに悪知恵を教え込むゼンガはブラボーだ」

 同会長は「カターニャのイレブンは敵にイエローを誘発させる動きを仕掛ける」と切り出すと、対戦相手に退場者を出させて人数的優位に立つというカターニャの「ずるい勝ち方」を指摘した。インテル戦にはじまり、キエボ戦、そしてシチリアダービーと、今季のカターニャは他に比べると、敵を10人にして戦った試合が多い。前者とのアウェイでは敗戦したものの、相手の主力選手を欠くように変化を狙うプレー、流れを掴んだ時間帯に得点を奪う戦い方が効果をあげているのがわかる。例えばパレルモ戦後、ゼンガ監督は「DFカロッツィエリが試合開始直後にイエロー、同45分に退場したことから、森本の速い動きがディフェンスをけん制するなどチームのプレーが機能しているという感触をもった」と自説を貫き、その試合で決定機を外したものの「うるさいハエ」役を全うした森本を褒めたのだった。

 カターニャの、スコアが動き出す前に打つ「ハエ作戦」に組織的な攻守に定評のパレルモも手を焼いていたのは事実である。今季のカターニャは、人数的に優位に立ってボールを支配してゆく独特の戦略法、それがセリエA最小失点率にも表れている。

 森本担当の私としては、カターニャのCL出場が正夢となるようゼンガ監督の「マジカルなハエ作戦」に大いに期待したい。

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