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千葉ロッテマリーンズは、本気だ。 

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2005/07/14 00:00

千葉ロッテマリーンズは、本気だ。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 7月5日の東京ドーム・北海道日本ハム対千葉ロッテ戦。

 7回表が始まるときのことだった。マリーンズのテーマソング『ウィ・ラブ・マリーンズ』がスタジアム全体に流れ、黒いレプリカユニフォームに身を包んだマリーンズファンが総立ちになる。国内最高レベルの解像度を誇る東京ドームのオーロラビジョンには、テーマソングに合わせて、それぞれが思い思いに大声を張り上げる様子が映し出されている。

 そして、カメラはある一群を捉える。画面には、ポンポンを持った女性の集団が大映しされていた。若い女性の集団が熱心に応援する様子は確かに絵になる。 10人前後はいただろうか、カメラはゆっくりとその集団を映し出す。誰もが楽しげに、そして必死にマリーンズの逆転を願っているようだった。

 ──その瞬間。

 ポンポンを持つ女性の前で、画面にチラリと映った男性がいた。その男性こそ、千葉ロッテマリーンズ企画広報部長・荒木重雄だった。荒木は大手コンピュータ企業に勤めていたビジネスマン時代、東大のスポーツマネジメントスクールを受講しているときに、千葉ロッテにヘッドハンティングされ、「プロ野球改革元年」の今年、現職に就任した。

 ビジターゲームで、しかもVIPルームではなく一般応援席で、自チームのファンとともにプロ野球を観戦する。このシーンにこそ、今年の千葉ロッテの躍進の理由、そしてファンサービスに本気に取り組むフロントの姿勢が象徴的に表れていた。

 今年の千葉ロッテのファンサービスは、実に目覚しいものがある。

 ナイター全試合で行われる300発の花火、キッズベースランニング、次々と選手ごとの弁当を販売し、交流戦では相手チームの地元の名産品をあしらった弁当も作った。サイン会は毎試合前に行われ、試合終了後には球場外の特設ステージで、選手自らライブを行ったこともあった。球団関係者によると、いまだにファンクラブ会員は増加を続け、観客動員も昨年の倍のペースで増え続けているという。

 もちろん、試みが失敗に終わったこともある。昼でも見えるという触れ込みの「昼花火」はあまり見えなかったし、球場内に桜吹雪を舞わせたものの、風向きの関係で紙ふぶきがグラウンドに舞い込み、試合が中断したこともある。先日の「ビアスタジアム」では、ビール1杯300円の安価のために呑みすぎたのか、酩酊した観客が喫煙所で寝込むシーンもあった。それでも、「新しいことに取り組もう」という積極的な姿勢は、「プロ野球改革元年」の今年、絶対的に評価していいことだろう。

 ──7月5日の東京ドームでの試合。話には、まだ続きがある。

 試合が終わった後の東京ドーム近くのとある韓国料理店。ひっそりとした路地裏にあり、知る人ぞ知る名店として、試合終了後のプロ野球選手も訪れる店。そこには、グラスを傾けながら、しかし、レジュメを片手にスタッフ数人との打ち合わせに臨む荒木の姿があった。さらにそこには、編成部長の宮田隆の姿もある。食事を兼ねた試合終了後の打ち合わせは、深夜1時に及んだ。今年の千葉ロッテマリーンズは、本気だ。

 ボビー・バレンタイン監督は言う。

 「今年のマリーンズは本当にいい“チーム”だよ。誤解しないでほしいのは、“チーム”というのは、選手たちだけのことではなくて、セトヤマさん(=瀬戸山球団代表)、ミヤタさん(宮田編成部長)、アラキさん(荒木企画広報部長)たちを含めた“チーム”なんだ」と。

 やはり、今年の千葉ロッテマリーンズは、本気だ。

千葉ロッテマリーンズ

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