MLB Column from USABACK NUMBER

オバマ当選がMLB選手に
嫌がられる理由。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/11/10 00:00

オバマ当選がMLB選手に嫌がられる理由。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 11月4日、バラク・オバマが第44代米大統領に当選した。ひと月前の本欄でセイバーメトリクスの専門家ネイト・シルバーが野球の成績予測で培った技術を駆使して大統領選の予測に乗り出した話を紹介したが、当地では、彼の得票率予測(オバマ52.3%、マケイン46.2%)が、現実の結果(オバマ52.5%、マケイン46.2%)を極めて正確に「当てた」ので、評判になっている。私も「野球という複雑精妙なゲームの結果を予測することに比べれば、大統領選の結果を予測するなど赤子の手をひねるようなもの」と書いただけに、鼻が高いところである。

 さて、オバマの当選で一番興奮しているMLB関係者は誰かといえば、それは、ホワイトソックスのGM、ケニー・ウィリアムズだろう。MLBの歴史の中でも数少ない黒人GMの一人として、黒人初の大統領誕生はそれだけでも嬉しいところだが、オバマは熱心なホワイトソックス・ファンであるだけに、ウィリアムズは一層興奮、今から「来季開幕戦の始球式をしてもらいたい」とメディアを通じて「陳情」しているのである。

 しかも、ホワイトソックスにしてみれば、「オバマが始球式をすると縁起がいい」という前例があるだけに、ウィリアムズの「陳情」は本気と思ってよいだろう。ここまで、オバマがホワイトソックスの試合で始球式をしたのは2005年のア・リーグ選手権第2戦が最初で最後であるが、オバマの始球式後ホワイトソックスは勢いに乗り、負け知らずの8連勝で88年ぶりのワールドシリーズを達成したのである。自分の始球式後に快進撃が始まったのだからオバマが気をよくしたのも無理はなく、連勝中、オーナーのジェリー・ラインズドーフに「もし、チームの調子が悪くなったらいつでも始球式をするから呼んでください。肩も休養十分だから」とメールを送った逸話が残っている。

 と、ホワイトソックス関係者がオバマの当選ではしゃいでいるのとは裏腹に、MLB選手のほとんどは、逆に暗い気持ちになっている。というのも、オバマは、レーガン政権以降続いた「金持ち優遇税制」を改め、「高額所得者の増税」を公約に掲げて当選したからである。オバマが、公約通り、最高税率を35%から約40%に上げる増税を実施した場合、対象になるのは25万ドル以上の高額所得者であるが、MLBの最低年棒は39万ドル(2008年)、ほぼ全選手が増税の対象となる(つまり手取りが5%減る)のだから、はしゃぐ気になれるはずなどないのである。

 今オフのFA契約交渉に当たっても、オバマの増税が実施されることを想定、「年度末までに契約を結び、来年以降の年俸よりも今年中にもらえる契約一時金の割合を増やす(今年度中に得られる収入には新しい税率が適用されないため)」形式の契約が増えると予想されているのである。

■関連コラム► 大統領選とセイバーメトリクス。 (2008年10月3日)
► 米大統領選とペナントレース:バラク・オバマの大間違い (2008年9月5日)

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