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野球シーズンは終わらない 〜アリゾナ・フォールリーグから 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYasushi Kikuchi

posted2004/11/09 00:00

野球シーズンは終わらない 〜アリゾナ・フォールリーグから<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 まさに劇的な幕切れだった。86年ぶりのレッドソックスのワールドシリーズ制覇。ニューヨークの有名コラムニストが、「昨年のリーグ優勝決定戦での逆転負けという悲劇も、すべては今年の“奇跡”につながる演出だった」と評論していたが、それらの美辞麗句が似合うぐらい感動的な優勝だった。野茂投手や大家投手が在籍していた当時に取材していた経緯もあり、個人的にも愛着あるチームだっただけに心から祝福したい気持ちでいっぱいだ。

 ワールドシリーズが終了し、大物選手たちが続々とFA公示をする中、いよいよメジャーもストーブリーグに突入した感がある。しかし実をいうと、アメリカの野球シーズンは連綿と続いている。現在NBAサンズに所属する田臥勇太選手の取材でアリゾナ州フェニックスにいるのだが、この地では今なお野球シーズン真っ只中なのだ。

 「アリゾナ・フォールリーグ」という名称を聞き覚えの方もいるだろう。メジャーリーグが直轄するリーグで、メジャーを目指す若手の登竜門と位置づけられている。日本人選手にも前田勝宏投手(当時ヤンキース)や田口壮選手が参加したことがある。

 リーグには6チームが参加。メジャー全30チームがそれぞれ5チームずつに分かれ1チームを構成。例えば今年のドジャーズの場合、ダイヤモンドバックス、レッズ、アストロズ、ブルワーズとともに「スコッツデール・スコーピオンズ」を組織。ロースター登録選手は30名。メジャー経験が1年未満の3Aと2Aの在籍選手が対象で、各チーム1名だけ特別枠で1A選手を参加することができる。まさに数年以内にメジャー定着を目指す“金の卵”たちが集結している。(ちなみに同じMLBのトピックで挑戦記を担当している荒川投手が参加していた「インストラクション・リーグ」は1A以下の選手を対象にしたもの。こちらはすでに終了している)

 すでにリーグは10月5日から開幕。各チームともに38試合戦い、上位2チームが11月20日のリーグ優勝決定戦に出場できる。試合では各チームのフロントやスカウトたちが熱い視線を送っている。選手たちも来季のロースター入りやメジャー・キャンプ招待を狙う選手たちばかりなので真剣そのもの。レベルの高い試合を繰り広げている。

 シーズンオフに行われるのはフォールリーグだけではない。11月に入ると、今度はドミニカ、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラの4ヵ国でウィンターリーグが開幕する。こちらは出場資格選手に厳しい規則がないので、現役メジャー選手たちも多数出場する。さらにメジャー球団との提携もすすんでおり、フォールリーグのように所属選手たちを各リーグに送るシステムも確立している。

 各国リーグの優勝チームは年明けから行われる「カリビアン・ワールドシリーズ」に出場、そこで4カ国チャンピオンを決める。昨シーズンの場合はキャンプ直前の2月上旬まで及んでいた。

 というわけで、ここアメリカでは明確なシーズンオフというのは存在しないというのが本当のところだ。野球選手たちも本人が希望すればほぼ1年間野球を続けることができるのだ。野球をこよなく愛するファンにとっても最高の環境といえるだろう。

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