Column from SpainBACK NUMBER

赤く染まりきれないスペイン代表。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/04/06 00:00

赤く染まりきれないスペイン代表。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 セルビア・モンテネグロが弱いなんて思わない。旧ユーゴ時代から、スペインは東欧の強豪と名勝負を演じてきた。しかし、W杯欧州最終予選グループ7で、首位セルビア・モンテネグロに3ポイント差で2着を行くいまのスペインには、何ともいえないじれったさを感じる。ケズマン、ミロセビッチ、ミハイロビッチを擁するセルビア・モンテネグロは、日韓W杯とEURO2004に出場できなかった悔しさをバネにしている。ドイツまで逃してたまるか、と。スペインとて日韓W杯に続き、EURO2004にも出場こそしたが、影は薄かった。ならば2006年こそは、という思いが強いと信じたいのだが、選手も国民もいまひとつ乗れていない気がする。

 代表よりもクラブ命。毎年、囁かれることではあるけど、やっぱりスペイン人は代表への愛情が足りないのだろうか。たとえば、バルセロナのオレゲルがスペイン代表に召集される可能性が出てきたとき、地元マスコミは彼にこう聞いた。「スペイン代表とカタルーニャ代表、どちらを選びますか?」。たとえるなら日本代表と関西代表。意味合いとしてはそんな感じだろう。世界の常識でいけば、国の代表と地域の代表を比べることなどナンセンスだが、スペインにはそんなムードが存在する。

 彼らとてスペイン代表のユニホームを着ることに違和感はない。W杯やEUROでスペイン代表として戦うことの新鮮さには、クラブとはまた違った感動がある。フランコ政権時代にカタルーニャが迫害された歴史はあるにしても、スペイン代表としての喜びも当然あるだろう。だが、選ばれてもいないのに代表について話すのは「馬鹿げている」と控えめのオレゲルは語る。「選手として選ばれればベストを尽くすのがプロというものだ」とも。何があろうともボールの前ではプロフェッショナルなわけだが、誰もがスペインの赤に染まっているかというと、そうではない。

 愛国心より郷土愛がさらに強いのも、国の代表よりクラブを優先するのも、彼らにとっては自然なことである。クラブでの活躍なくして、代表への道も開けない。セルビア・モンテネグロ戦で負傷したプジョールは、4月10日のレアル・マドリー対バルセロナ戦への出場は難しいと診断されている。しかし、彼はW杯決勝の舞台よりも、バルサの一員として宿敵レアルと戦うことを重視しているはずだ。それほど、バルサを愛し、クラシコを特別に思っている。それは、ファンも同じ気持ちだ。

 いまのスペイン代表は世界で一番若い集団かもしれない。スコアレス・ドローに終わったセルビア・モンテネグロ戦のメンバーの平均年齢は25歳だった。19歳でデビューしたカシージャスは、代表キャップは47試合を数え、キャプテンまで務めるまでになったが、まだ23歳だ。レアル・マドリーやチェルシーからラブ・コールを受けているベティスのホアキンも23歳で、フェルナンド・トーレスは21歳である。初召集されたセビージャのセルヒオ・ラモスにいたっては19歳になったばかりで、スペイン代表の大半は80年代生まれだったりする。それだけに、スペイン内戦以来受け継がれる意識も、10年前の選手に比べればそれほど強くないとも思える。

 若手ばかりでなく、アトランタ五輪でラウールとともに戦ったデ・ラ・ペーニャがスペイン代表に名を連ねるようになったのも興味深いところだ。子どものころからバルサでは天才児と謳われながらも、ファン・ハールに嫌われて、移籍した先のラツィオ、マルセイユではケガとベンチの繰り返しの日々だった。エスパニョールでは解雇寸前まで追い込まれもした。それだけに、代表にも選ばれ「いまが一番充実している」という彼の言葉には重みがあった。バルサでロナウドを得点王に導いた彼のアシストを、トーレスにも合わせることができたらどんなに頼もしいか。イメージは悪くない。

 もしかすると、問題は指揮官なのかもしれない。イングランドやポルトガルも外国人監督を就任させている。ギリシャはドイツ人監督で旋風を巻き起こした。クラブでは当たり前の感覚が代表にも求められているのかもしれない。とりあえずは、66歳のルイス・アラゴネスとその孫たちを見守るしかないのだけれど。

 そこまで悲観的になることもない、予選は突破するだろう、いまからそんなに目くじら立てることはない――こんな気持ちが蔓延しているから、いつもスペインは赤く染まることなく消えていく。まあ、スペイン人らしいと思えば、それまでだ。ぼちぼちドイツあたりでスポット・ライトを浴びてもいいとは思うけど。

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