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シチリア人と化した森本貴幸。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byAFLO

posted2006/10/13 00:00

シチリア人と化した森本貴幸。<Number Web> photograph by AFLO

 9月30日、今夏、セリエA・カターニャに移籍したFW森本貴幸は、ユースの試合に出場した。

 カターニャ郊外のマッサアヌンツァータという田舎町のグラウンド。その日はイタリアメディアがストライキとあって、観衆は選手の父兄のみだった。私と同世代の「お父さん、お母さん」たちに囲まれながら、ピッチでウォーミングアップをする褐色の森本を見た瞬間、思わず自分の目を疑った。

 「あれが森本?」

 45日ぶりに目にした青年・森本は、まさに「シチリア人」と化していた。

 移籍した当時の森本は、チームメイトから「弟」扱いされ、本人のプレーも新人らしく遠慮がちだった。しかし今では、次第に環境にも慣れ、ユースチームのエースとなっている。

 対戦相手であるレッジーナの組織的な守備に対して、質の高い攻撃を何度も見せるモリ(森本の愛称)。そのプレーに惚れ惚れした。味方のパスに反応して芝の上を走り抜け、GKと1対1になった瞬間、シュートをゴール隅に突き刺すテクニックは圧巻だった。決めるべき時間帯で決めた森本に、観衆は大きな喝采を送る。当初は、意表をつくパスは出せても決定力不足が目に付いたが、短い期間でフィニッシュの精度をグンと上げたのが手に取るようにわかる。

 日本のユースはパスサッカーに優れてはいるものの、攻撃のアイデアという点では少々物足りない。しかし、今の森本は違う。対戦相手の力や戦術に拘らず、クレバーなプレーを実践している。自由にプレーできるユースで、モリはシチリア特有の開放的かつ豪快さを自らのキャラクターに加え、元イタリア代表のFWスキラッチを連想させるストライカーになっていた。

 試合後、「シチリア人のようだね」と森本に冗談を投げかける。すると彼は、表情を緩め「ここでプレーするのは楽しいです」と即答した。「ユースから学ぶ点も多い。日本でも成長はできるかもしれませんが、イタリアではその度合いが違う」。彼の言葉には重みがあった。

 先日、U19の吉田監督が森本を選考メンバーから外す方針を固めたが、10月29日から開幕するアジア選手権では、シチリア風のスパイシーなプレーを武器として、チームの戦力になれると信じている。

 この試合を見た後、私は取材の枠を超え、まるで「父兄」のように、チャレンジを続ける森本にエールを送っている。

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