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本音と建前。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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posted2004/09/17 00:00

本音と建前。<Number Web> photograph by AFLO

 最近、ハンブルクの地元新聞記者に2つの質問を投げてみた。「高原直泰はどうだい?」と「バイエルンは優勝するだろうか?」である。

 日本人唯一のブンデスリーガ・プレーヤーである高原だが、いまや完全にベンチウォーマーだ。今季の出場は2回。時間はたったの9分と25分。これでは何もできない。通算出場は47、通算ゴールは5。ストライカーとしては寂しすぎる数字だよ~。

 HSVはシーズン開幕前から調子が悪く、監督は毎週クビをかけて試合に臨んでいるので、ここであえて“第4のFW”高原に賭けるなど、あり得ない話だろう。こうして高原の出番はますます減ってくる。

 地元記者は「タカはおとなしすぎる。選手起用に異議を唱え、自分を先発させろとアピールしないとチャンスは巡ってこないぞ」と指摘するのだが、ここらへんの感覚は日本人だとちょっと抵抗がある。オレがオレが、は日本人の美徳ではないし、たとえそう思っても本心は隠しておくからだ。

 一方のバイエルンの優勝。マスコミは開幕前、恒例行事として全18チームの監督に「優勝するチームはどこ?」のアンケートをとる。だいたい毎年、2~3の例外を除いて「バイエルン」と答えている。今年もそうだった。自分のチームをさておいて、ライバルが優勝候補だってさ!

 さてここで問題。2つの質問で共通するのは何でしょうか?

「それは、本音と建前の使い分けが日本ほど通用しないということです」(拍手!)

『実直、原則維持、規律』が支配するこの国のサッカー界で、建前はムダの象徴である。出場したかったら選手は正直に(時には強引に)言うべし、ダメだったら移籍を宣言すべし、自分のチームがバイエルンより弱いことを素直に認めるべし――。そういうことなのだ。

 衝突を嫌うあまり、“蛸壺”に隠れて建前を披露するだけでは軽蔑される。身の丈知らずでチーム力を過大評価するのも同様だ。まぁ、ちょっとはハッタリも必要かもしれないけど、それも程度の問題である。あまりにバカ正直だと、スポーツの面白さがスポイルされてしまうからね。

 では次の質問。「クリンスマン代表監督は06年W杯で地元優勝を宣言しました。これは本音でしょうか、それとも建前でしょうか?」

 ブラジル戦を先行されながら引き分けて(1-1)、代表チームの雰囲気は試合ごとにアップしてきている。幼い頃よりクリンスマンを知る記者は、「ユルゲンは正直な男。ウソも誇張もない。だから今度も本気だ」

 原則に則ってとなるのか。だがちょっと待てよ…。ドイツ語のPrinzip(原則)という言葉には、相対的に「建て前」という意味も含まれているんじゃなかったっけ?

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