MLB Column from USABACK NUMBER

メッツを「放出」された美人妻のお騒がせ 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2006/04/10 00:00

メッツを「放出」された美人妻のお騒がせ<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 開幕を3日後に控えた3月30日、米球界関係者をあっと驚かせるニュースが報道された。

 この日、ニューヨークでは、セリグ・コミッショナーが、バルコ社から筋肉増強剤の供与を受けたとされるメジャーリーガー(つまり、ボンズ、シェフィールド、ジアンビの三人)を主対象として、機構が調査に乗り出すことを発表したが、「野球関係者をあっと驚かせたニュース」とは、このことではない。機構がメジャーのステロイド汚染に関する調査に踏み切ることは元々確実視されていたし、正式発表されたからといって、驚くに値するニュースではなかったからである。

 球界関係者が心底驚いたのは、もっと小さな、そして、社会的には何の重要性もない、それこそ、「犬も食わない」類のニュースだった。何のニュースだったかというと、あのアナ・ベンソンさんが、「離婚申請をした」という報道だったのである。

 オリオールズの投手、クリス・ベンソンの夫人、アナさんについては、男性誌でヌードになったり、旦那のチームメートを批判したりと、その物議をかもす言動が原因となって、旦那がメッツからオリオールズに放出された話を、本コラム(2月2日アップ)で、紹介したばかりだ。

 トレード直後に、夫婦そろってメッツを批判する記者会見を開くなど、ずっと「おしどり夫婦」として売ってきただけに、突然の離婚報道は球界を驚かせた。しかも、スポーツ・イラストレイテッド誌(4月3日号)で「今季メジャーでもっとも注目すべき20人」の一人にアナさんが指名されたばかりで、二人が離婚するなど、誰も夢にも思っていなかったのである(日本で、「松坂が注目すべき20人に入った」と報道されたのと同じ号である)。

 離婚申請の理由は、「夫婦仲が修復不能なほどこじれたため」と説明されたが、一部の報道によると、夫の浮気発覚が本当の原因であったという。アナさんのユニークな言動の中でも、「もし、浮気をしているのを見つけたら、仕返しに、バットボーイも含めて、チームの全員と寝てやる」と、夫に対し、世にも恐ろしい警告をしていた話は有名だが、もし浮気の噂が真実であるとするならば、小心者の私としては、ベンソン投手の「度胸のよさ」に感心する他はない。

 ところで、ベンソンを放出したメッツは、開幕直前に新人投手のブライアン・バニスターのローテーション入りを決めるなど、今季は、先発投手の頭数不足に悩んでいる。もし、あらかじめ二人が離婚することがわかっていたならば、ベンソンをトレードに出す必要もなかった勘定で、離婚の報道に、メッツのフロントが、「トレードなどするのではなかった」と後悔したことは想像に難くない。

 しかし、メッツ・フロントが後悔したとしても、その後悔が長く続くことはなかった。4月4日、アナさんが離婚申請を取り下げ、「よりを戻す」ことが発表されたからだ。アナさんの、またまたの「お騒がせ」に、メッツ・フロントは「やっぱり、トレードしておいてよかったのだ」と、ほっと胸をなでおろしたに違いない。

 メッツとはまったく理由が違ったが、「アナ・ベンソン・ファン・クラブ」の特別会員を自任する私も、復縁の報道にほっと胸をなでおろしたのはメッツと同じだった。私の場合、「メジャー全球場の駐車場制覇」(註)という、前人未踏の「怪」記録達成が、離婚のせいで不可能になったとがっかりしていたのだが、復縁のおかげで、記録達成の望みがよみがえったからである。

(註)何のことかわからない読者は、2月2日アップの本コラムを読むように。

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