佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

エンジンブロー 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2007/04/18 00:00

エンジンブロー<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 「残念!」と言って現れた。

 予選17位でQ2進出ならず。チームメイトのA・デイビッドソンがQ1を7位で突破しQ2進出し、13位となっただけに悔しさがないといったら嘘になろう。

 金曜日の試走を前に琢磨は「ここはどちらかといえばシンプルなコースなので、ボク達のクルマはマレーシアよりは楽」と言い、さらに「第1戦と第2戦はそれぞれいいところと悪いところがあったので、いいところだけをつなげたい」とプランを語り「レースでトップ10を目指す」と、目標を語った。

 金曜日は「事前テストで来た時よりもコンディションは悪い」としながらも「レースペースでいいセッティングがみつかった」と、一歩前進のコメント。土曜日の午前中も悪くはなかった。しかしいざ予選となると「ハード・タイヤから入って次にミディアム・タイヤに換えてアタックしたのですがマシンにグリップ感がなく、ブレーキングで滑ってしまう」状態に振り回され、17位に終った。いくら決勝重視のレース・セッティングをメインに作業を進めたとはいえ、ここまでポジションを落とすと前車の壁が厚過ぎ、せっかくのレースペースも活かされない懸念がある。

 琢磨は「17番手は苦しいが、ここはオーバーテイクできるコースだし、自分でチャンスを作って行ける」というが、果たしてどうか。チームメイトのデイビッドソンは、予選を重視したセッティングが功を奏して13位。後位に呑まれた琢磨と違って、中団からのスタートとなる。

 レースは琢磨にとって難しい展開になった。

 「走り出して数ラップするうちに、キビシイ戦いになることが分かった。マシンのいい感じが戻って来なかった」と、琢磨。トップスピードが伸びず、最高速は下から6番目。最速ラップも18位で、これではレースペースがいいなどとはとてもいえない。

 それに加えてまさかのエンジンブロー!白煙がコースを覆い隠すほど派手なものだったが、本来は予選前の土曜日午前中の走行も含めて2レース、約1000kmは持たなければならないエンジン、それも下ろし立てのフレッシュ・エンジンなだけに次戦スペインでも使う予定だったもの。さらにデイビッドソンのエンジンも白煙を噴き上げてストップ。スーパーアグリ陣営もアッケに取られるしかなかった。

 「接近戦の時はあまり気にならなかったが、単独走行になったら普通の状態ではないことが分かり、徐々にパワーロスして行って、そのうち壊れた……」と、琢磨。

 鈴木亜久里代表は開幕の早いうちにポイントを取りたいと言っていたが、その狙いは上位陣の思わぬ取りこぼしに乗じようというものだった。しかし、取りこぼしは自チームに起きた。

 「どのチームも壊れないよね。しかし、それはしょうがない。次からはもっときびしくなるよ」と、鈴木亜久里代表。

 スペインに向けての明るい材料は、新しいギヤボックスとフロント・ウイングのトライ。

 「空力のアップデートは楽しみですね」

 そう言い残して琢磨は数週間ぶりのモナコの自宅に向った。

佐藤琢磨

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