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新生ドラゴンズが突っ走るか。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2009/04/02 07:01

新生ドラゴンズが突っ走るか。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の熱狂の中で、忘れてはならない言葉がある。

「みんなが出ると思っているのが大間違いだ」

  WBC日本代表選手の選考過程で、中日・落合博満監督が吐いた言葉だった。

 その"大間違い"を証明するように中日はリストアップされた4選手が全員、出場を辞退した。「球団や現場の主導でボイコットしているわけではない。球団も監督も行けとも行くなとも言っていないが、本人に意思を聞いたら、たまたま4人とも辞退という話になった」と同監督が力説しても、その言葉に説得力がないのは中日ファンも分かっていた。

 こうして唯一、WBCに背を向けたチームは、ひたすらペナントレースに向かってツメを研いできた。

 今年の中日はチームとして大きな変革期にある。長年、エースの座を守ってきた川上憲伸がメジャーに移籍。打線では中村紀洋も楽天に移り、4番のタイロン・ウッズも抜けて新助っ人のトニ・ブランコが新加入した。

 その中で落合監督は大胆なコンバートを実行した。荒木雅博と井端弘和の二遊間を入れ替え、森野将彦を三塁に固定。内野の守備陣は一新された。まったく新しいチームに生まれ変わっただけに、チームとして形を整えるにはWBCなどに構っている時間はないということだったのかもしれない。

「うちはペナントレースに勝つために必死なんだよ。WBCなんてMLBと読売新聞のおためごかしのために、この大事な時期に選手を出すことはできないんだ」

 昨年の北京五輪には4選手を派遣したが、起用法をめぐってひと悶着あった落合監督がこう言ったら、どんなにスッキリ納得できたことだろうか。白井文吾オーナーが週刊文春の取材に「あれ(WBC)は読売新聞の興業ですから」と言い切ったことのほうが、よっぽど「なるほど!」とうなずけるものだった。

 かくしてペナントに照準を絞った中日がどんな戦いを見せるのか。これも今年のプロ野球の一つの注目となる。WBC第1回大会では8人の代表選手を出したロッテは、06年シーズンでBクラス(4位)に転落した。その伝でいけば5人の代表を出したライバル・巨人には、この時点で一歩、先んじたということかもしれない。

 WBCの余熱で盛り上がる球界。開幕後には優勝トロフィーが12球団の本拠地を巡回して、もちろん名古屋ドームにも展示される。そればかりか大会の分配金もしっかり懐に入る。もちろん中日も松坂大輔投手の横浜高時代の女房役だった小山良男をブルペン捕手として派遣するなど、まったく協力を拒んだわけではない(優勝のフィールドで小山が胴上げされた光景はちょっと感動的だった!)が……。

 勝てば官軍なのか。

 10月にもし落合監督が宙に舞う瞬間がきたなら、そのとき改めて最初の言葉を思い出して欲しい。そしてその胴上げに何を思うか。それは野球ファン一人ひとりが、忘れずに考えて欲しいことの一つである。

■関連リンク► 華やかなWBCの陰で浅尾拓也は牙を磨ぐ。 (2009年4月3日)
► 未完の完全試合。山井大介“決断の理由” (2008年4月3日)
► 落合監督直伝、岩瀬仁紀の投球術。 (2005年8月18日)

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