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欧州チャンピオン目前のACミランが抱える不安。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2005/05/11 00:00

欧州チャンピオン目前のACミランが抱える不安。<Number Web> photograph by AFLO

 5月8日、ユベントスが宿敵ACミランに1−0で快勝し、スクデット(リーグ優勝)に大きく近づいた。伝統の勝負強さと主力選手の頭脳プレーで3ポイントを手中に納めたユベントスに対し、ミランは、攻撃の決定力が欠けていた上、自慢の堅守もすっかり影を潜めていた。

 「ディアボロ(ミランの愛称)は疲れている」

 翌日のイタリア各紙は、ユベントスの快勝を称える以上に、ミランのパワーの低下はアンチェロッティ監督の采配に原因があるとし、指揮官を槍玉にあげた。今月25日にはリバプールとの欧州チャンピオンズリーグ決勝を控えているだけに、マスコミが、足踏みするミランの実状を不安視するのも止むを得ない。

 リーグ連覇を目指すミランは、大半は昨シーズンと同じ顔ぶれ。さらにDFスタム、FWクレスポを補強し、最強チームを構築した。そんな充実した布陣を揃えながらも、アンチェロッティ監督は昨季同様、今シーズンも「戦力の出し惜しみ」を続行している。「ターンオーバー制を起用してこそ連勝が可能」という、現代サッカーのスタンスである選手の入れ替えを、アンチェロッティ監督が拒むのも、信頼するウォミニ(選手たち)が指揮官の期待に十分答えるだけの能力があるからだ。確かにミランの持久力は欧州クラブの中でも抜きん出ている。

 しかし、選手らが体を張った守備ができず、秘蔵っ子MFピルロが攻撃を取り仕切ることができなくなれば、当然ながら攻守の再編は不可欠となってくる。

 実際、ユベントス戦を振り返ってみると、主力組を揃えた前半は攻撃が機能せず。後半、劣勢を立て直すためにルイコスタ、インザーギらをピッチに送り込んでも、疲れきったミランは勢いづく相手に苦戦するばかりだった。先のPSV(オランダ)戦同様、いとも簡単に失点を許してしまう箇所にも問題はあった。

 従って、黒星を喫したミランにマスコミが「アンチェロッティの采配ミス」と攻撃するのも、適切な見解といえる。

 そもそもアンチェロッティ監督の「誤算」は、38試合という今季セリエAの日程にあった。昨シーズンならとっくに終了しているはずのリーグ戦も、18から20にチーム数が増加するというセリエA再編成に伴い、今年は4試合多い。更に、カップ戦に臨むミランにとっては、正に「魔の5月」とも呼ぶべきで、公式戦6試合すべてがタイトルのかかった真剣勝負。選手の負担は計り知れない。

 過密スケジュールで主力選手たちが運動量を落としているのは言うまでもなく、アンチェロッティ自身も新たなシステムを考案できないほど、心身ともに疲れきっているのだと思う。だからこそ試合勘のある選手の起用に依存するのだ。

 スクデット争いの直接対決に敗れた以上、ユベントス優勢は間違いない。しかし、アンチェロッティといえば近年のイタリアが誇る名将。最後まで欲を出してもらいたい。ミラン不敗の原動力となっていたディフェンスの厚い壁、そして特有の攻撃に変化をつけたプレーの再現も、アンチェロッティが生み出す新たなシステムにかかっているのだから

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