レアル・マドリーの真実BACK NUMBER

“問題児”を抱えて喜ぶ“問題クラブ”。 

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木村浩嗣

木村浩嗣Hirotsugu Kimura

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photograph byMarcaMedia/AFLO

posted2006/01/11 00:00

“問題児”を抱えて喜ぶ“問題クラブ”。<Number Web> photograph by MarcaMedia/AFLO

 またやってくれた。ベニート・フロロとカッサーノだって。本当にこのクラブに改善の気持ちはあるのか?

 アリゴ・サッキの後釜としてスポーツディレクターに就任したフロロは、のっけからファンに嫌われている。74%が「適任ではない」と答えているのだ(「エル・ムンド」紙のアンケート調査による)。

 生え抜きのフェルナンド・イエロが第一候補のはずだったが、断られたのだろうか。イエロがフロント入りしていれば、2004年のデル・ボスケと併せたダブル解任劇(契約更新せず)以来の和解となったはず。ご存知のとおり、あれ以来、タイトルが獲れないフロントが失策を認め、ファンの批判を沈静化させていただろう。

 再建はまずは反省から。

 フロレンティーノ会長が直前に「クラブはスポーツ面の方向を見失った」と、初めて自己批判らしきものを口にしていただけに、謝罪と和解のタイミングとしては絶好だった。新監督、新メンバー、新メンタリティで再出発が約束されていたはずなのだ。

 なのに、フロロである。

 戦略・戦術にこだわる理論家で92−94シーズンに監督経験もあるが、生え抜きではなくクラブを知り尽くしているとは言いがたい。“スペイン人のサッキ”という印象。選手とフロントのパイプ役となり、長いスパンでチームを改造する能力があるのか。ここ最近のスペイン、日本、メキシコでの監督経験の失敗で、メディアとファン双方に“戦略オタクだが、実績を残せない”というマイナスイメージを与えている。

 私は理論家は嫌いでないし、彼の戦略・戦術観にも共感する部分がある。が、国を変えチームを変えても、こうまで結果が出ないとプロ監督としては、疑問符を付けざるを得ない。

 フロロには逸話がある。

 レアル・マドリーを解任される寸前、ロッカールームで不甲斐ない選手を怒鳴り散らす、放送禁止用語満載の音声(開いていた扉からカメラを突っ込んで撮影された)が、全国放送されたのだ。ごく一部を採録する。禁止用語は訳さないので、興味のある人は辞書を引いて楽しんでほしい。

 「どこにコホーネスがついてんだ!」、「負ける奴はマリコンだ!」、「ボールなんてのは後ろからクーロに突っ込めばいい!」、「プータのように好きなことをやってもいいが、勝つんだコーニョ!」。で、最も有名なフレーズは「ピトをつかって敵をフォジャールするのだ!我われはレアル・マドリーなんだぞ!」。下品である。クラブの名誉を傷つけたことが、解任の理由の一つだとも言われる。

 が、これくらいの言葉はこっちのサッカー界では普通だ。15分間の休憩で形勢を逆転するためには、100の理論より1の罵倒の方が効く。私もこの映像を見たが、クールな理論家に潜む激情には親近感が湧いた。

 とはいえ、フロロは適任ではないと私も思う。ファンのフロント不信、選手批判をかわし、再建の地ならしをするためには、別の人選があったはずだ。

 カッサーノ獲得はもう理解を超えている。

 何で、またトップ下(または第2フォワード)なの?最も人がだぶついているポジション──ラウール、ロビーニョ、バプティスタ、ジダン、グティ──なのに。将来性を見込んだとすれば、来季以降、この顔ぶれの誰かがチームを出て行くという意味だろう。

 「いい足をしているが頭が悪過ぎる。間違っても獲らない」とサッキは獲得に反対していた。「発言当時はラウールは怪我をしていなかったから……」とフロントは言い訳しているが、ラウールが怪我したからといって「頭の悪さ」が治るわけではない。サッキはお別れ記者会見で「私の仕事を好きとはいえない。やるべきことの一部しかできなかった」とフロントの介入があったことをほのめかしたが、意に反してカッサーノ獲得が進んでいることへの不満だったのかもしれない。

 タレントは疑いない。しかも若い。だけど、札付きのトラブルメーカーである。

 イタリアでは「大人になって来い!」と送り出したようだが、今の問題だらけのレアル・マドリーに、問題児を預かり更生させる余力が本当にあるのか?

 ただでさえ、選手同士の不仲が噂されるプライドの高いスター集団で、カマーチョやルシェンブルゴが手を焼いた“世界一難しいロッカールーム”という有難くない名前を頂戴したチームが、そんな余裕をこいている場合だろうか。爆弾がたんまり詰まった火薬庫、火花がバチバチ散っている場所で、すぐ爆発することで評判の地雷を抱え込んで信管を抜くなどという、命を賭けた綱渡りを買って出るとは、なんと人の善いことか。

 ラウールが意外に急ピッチで回復に向かっている。ロビーニョとバプティスタの調子も少しずつ上向きだ。ロペス・カロ監督がカッサーノを必要とするとは思えない。となると、誰が獲って来たのか?またもや銀河系的発想の天の声だったのだろうか。

 カッサーノが本人の言うように心を入れ替え、サッカーに集中すれば、素晴らしい活躍をするかもしれない。だが、クラブの屋台骨が揺らぎ、若い新監督に再出発を託す今、そんな危険な賭けをするメリットがどこにある?今こそファン、フロント、チームが気持ちを一つにすべき時なのに。

 年は変わったが、残念ながらレアル・マドリーは何も変わっていない。

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