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リベリーこそ、将軍と呼ぶべきである。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/03/12 00:00

リベリーこそ、将軍と呼ぶべきである。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ブンデスリーガ第22節、シャルケ04対バイエルンの注目の一戦は世界160カ国に生中継された。“同国人”という小さなキーワードだけで欧州サッカーの中継順位が決まってしまう不思議な国・日本にいると分からないことだが、S04対FCB(バルセロナのことじゃないぞ!)はドイツサッカーの最高峰で、他のどんなカードよりも話題が集中する。これほどのビッグゲームを生で見られない日本のファンは、まことに不幸である。

 「おい、もっと放映権料を安くして日本のファンにブンデスリーガの魅力を伝えることがアンタたちの役目だろうが!」と現地当局者に文句を言いたい気分だ。でも実際に責任者が目の前に現れたら、「よろしくね、ウッフン♪」とお願いするけど……(チキンハートだなぁ)。

 ところでこの両チーム、クラブカラーもファン層も何から何まで対照的なのが面白い。上品/下品(ゴメン!)、健全/不健全(だってロシアの怪しい企業がスポンサーなんだもの)、緻密/いい加減(決算を見れば明らか)というようにである。例えは悪いが、貴族Vs労働者のような階級闘争に通じるものを感じてしまうほどなのだ。

 周辺環境はそういうわけでバイエルン絶対優勢なのだが、ピッチに目を移すとシャルケに軍配が上がる。理由はただ1つ。S04がチャンピオンズリーグに出場し、バイエルンがUEFAカップ組だから。まあ、今季だけのことだけどね(笑)。

 で、リーグ戦である。いやはや、驚いたの何のって。たった1人の選手の活躍がサッカーの試合にこれほどまでに決定的な影響を与えたことに改めてビックリしたのだ。それがフランク・リベリーである。

 この試合で(も)リベリーはまさに縦横無尽の大活躍をしてみせた。ポジションは左のMF。従来の概念だと、2列目の選手がゴールエリアに深く切り込むシーンはそう多くない。前線の2トップに縦パスを出すか、MFセンターにボールをつないで、そこから再びサイドに出てパスを受けてセンタリングを上げるといった動きがこの国のサイドハーフなのだ。バラック時代はまさにこのスタイルを踏襲していた。絶対君主だったバラック経由でなければゴールは生まれないし、なによりチームのヒエラルキーを冒すものとしてサイドハーフの役割は限定的だった。

 しかしリベリーがこのお決まりの展開を壊した。それも徹底的に。唯一の得点となった前半14分のクローゼのゴールがそれを象徴している。センターサークル付近、まずアルティントップが左のリベリーにパスを出した。中央付近の3列目にポジションを取っていたリベリーは、駆け上がってきたヤンセンに左足ダイレクトでパスを送る。そのヤンセンは2列目中央のシュバインシュタイガーにさらにパス。ここでシュバイニーが2秒ほどのタメを作る。

 ヤンセン、シュバイニーとボールが動いている間、リベリーは全速力で相手陣内に突進してきた。“次の次”を予測しての走りだったのだ。シャルケのDF4人は誰一人として、リベリーがここまで走ってくるとは予想せず、シュバイニーのマークに気を取られた。2秒間のタメがここで生きた。

 スルリと出た縦パスを無人のスペースでキープしたリベリーは、クローゼがゴール前に出るタイミングをまさにコンマ何秒の精度で計算してラストパスを送ったのだ。ボールはクローゼ得意の頭にも足にも当たらなかった。当たった箇所は腹部だった。タイトなマークをされているのを見極めて腹を狙ったのかどうかは定かではないが、リベリーだったら出来る芸当である。

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