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カターニャ・森本貴幸の懊悩。
最下位チームの救世主となれるか? 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byUniphoto Press

posted2010/01/06 10:30

カターニャ・森本貴幸の懊悩。最下位チームの救世主となれるか?<Number Web> photograph by Uniphoto Press

W杯イヤーを迎え、森本の1日も早い復調が待たれる

 森本貴幸が苦しんでいる。

 あんな彼の顔は見たことがなかった。カターニャがついに単独最下位に沈んだ16節リボルノ戦後のことだ。憔悴しきってミックスゾーンに現れたとき、その顔色はこちらがぞっとするくらい青ざめていた。試合中の競り合いで負った右目尻の切り傷も痛々しい。

「すべて俺の責任です」

 地元メディアにも、日本報道陣にもひたすら同じ言葉をくり返し、ゴールから遠ざかっている自分を責め続けた。ことサッカーに関しては一途すぎるくらい真面目な森本だが、なぜそこまで追い込まれてしまったのか。

開幕前のチーム体制一新でカターニャの崩壊が始まった。

 今季開幕前、カターニャはチーム体制を一新した。端的にいうと、人件費削減を狙いとする、経験の浅い青年監督の登用と選手編成の南米化だ。ウインターブレイク直前の17節ユベントス戦では、先発11人中、実に7人がアルゼンチン人選手だった。昨季までであれば、バイオッコやテデスコら残留争いの厳しさを知るイタリア人ベテランMFがチーム内を束ね、その上でムードを引き締めていたのが、あの闘将ゼンガだった。

 彼らが去ってしまった後、一気に多数派勢力となったのが南米系選手で、増長した彼らはわずか38歳の青年監督アッツォーリの指導を軽んじていた。彼らにとってカターニャは所詮、出稼ぎ先にすぎない。闘う姿勢のないまま、リーグ戦に臨んだ今季のカターニャは連敗を重ねた。

 最悪だったのは3度目の3連敗だ。後半ロスタイムに集中力を切らし2失点したミラン戦。残留争いの直接対決2連戦の初戦シエナ戦では、2度のリードを奪いながら逆転負け。アッツォーリは更迭され、リボルノ戦を前に急遽ミハイロビッチ前ボローニャ監督が招聘されたが、退場者を出した挙句に後半43分の失点で勝ち点を取りこぼした。

まだ21歳の森本はチーム最古参として重責を背負うことに。

 カターニャには、劣勢のときにピッチの中で“キャプテンシー”を発揮できる人間がいない。本来主将であるFWマスカーラは「俺が、俺が」と周囲をグイグイ引っ張っていくタイプではない。その彼が、ミラン戦の後行なわれたコッパ・イタリア4回戦エンポリ戦で、PKキッカーを森本に譲るシーンがあった。森本のイタリア公式戦初PKは無事に決まり、試合には勝ったが、試合後のマスカーラは弱々しい表情で語った。

「モリに蹴らせるべきだと思った。結果が出なくて、あいつが苦しんでるのも知ってる。セリエA1年目からこのチームに残ってるのは、俺とやつだけだから」

 わずか21歳にして森本はいつの間にか、カターニャ現所属選手の中で最古参になってしまっていた。さらに先発センターフォワードとして、点を取る責任を一身に担っている。チームの未来を左右する重責を背負わされ、悲壮感すら漂わせて気負ってしまうのも無理はなかった。自分を起用し続けてくれた監督も去り、葛藤は倍増しただろう。

「FWが点取ってないから、チームが新しい選手を探すのは普通だと思う」というリボルノ戦後の森本の言葉に、ポジションを確立できず、セリエB行きを覚悟していた1年前の姿を思い出した。

<次ページに続く>

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