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恐いもの知らずの“大学生”たち。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byAFLO

posted2005/06/23 00:00

恐いもの知らずの“大学生”たち。<Number Web> photograph by AFLO

 蒸し暑いこの時期、日本の学生諸君はネクタイに背広、あるいはリクルートルックといわれる服装で、熱心に就職活動に勤しんでいる。彼らは情報誌をくまなく読んで研究しているから、面接時の受け答えなど慣れたもの。ソツなく、優等生的な態度で大人たちの好感を得ようとする。だが担当官が「想定外」の不意な質問を投げると、忽ちのうちに答に窮してしまうという。これは学生だけに限らないが、ふだんから自己表現が苦手な我々には耳の痛い話である。

 ではサッカーで、しかも20歳そこそこの若造がこんな質問を受けたとしよう。

(1)「アルゼンチンにはサネッティが、ブラジルにはルシオという強力なDFがいますが、対抗できますか?」

(2)「FWのパートナーは誰が最適ですか?」

(3)「チームはDFの脆さが指摘されていますが?」

 繰り返すが質問を受けるのは日本流の成人式を迎えたドイツ人青年である。そして出てきた彼の答はこういうものだった。

 「どんなDFだって僕にはかなわないさ」「誰だっていい。僕は誰とだって一緒にプレーできるよ」「失点の責任はDFじゃない。チーム全体の責任だ」

 う~ん、彼には想定内であったとしても、自信に溢れたすごい対応だなぁ。オジサンとしては感心するしかない。

 実はこれ、コンフェデレーションズカップ初戦の対豪州戦で鮮やかなゴールを決めたルーカス・ポドルスキーのコメントなのだ。「ルーカスの記事がなければ、誰も新聞なんか読まない」と言われるほど、地元ケルンで圧倒的な人気を誇るポドルスキーは85年6月4日生まれ。豪州戦ではまだ20歳と2週間の若さだった。

 クリンスマン監督就任以後、チームは劇的な変化を遂げた。その象徴が一気に若返ったメンバーの顔ぶれだ。わずか2年前まで、『チームは30歳を超えたロートルばかり。この国に若手はいないのか』と嘆き節が支配していた国とは思えないほどである。

 大活躍を見せレギュラーを獲得したシュバインシュタイガーのほか、メルテザッカー、フート、そしてポドルスキーは揃って20歳。チュニジア戦で交代2分後にゴールを奪ったハンケは21歳だ。こうなるとなんだか、25歳のダイスラーがベテランに見えてしまう。

 若さとは恐いもの知らずの代名詞。72年欧州選手権で衝撃的な優勝を遂げた西ドイツ(当時)の中心メンバーは、20歳のヘーネスとブライトナーだった。その後の彼らの偉業はご存知の通り。だから、というわけじゃないが、今のチームにはとてつもない可能性が隠れていると、ビンビン肌に伝わってくる。

 フートは豪州戦の3失点で集中的に批判を浴びているが、彼もけっこう面白いコメントを残している。「僕らは民主主義の中で生きているわけだから、誰が何を言っても自由だ。でもチーム内じゃ誰も(僕の失点に)興味がないさ」「自分が弱かったなんて思わない。だからチーム専属の心理療法士と相談することなんて必要ない」

 天晴れである。堂々とした態度とミスに動じない鉄の心臓は、我々も見習いたいものだ。ナイーブな年齢ながら、強靭な精神力を持つアンバランスの美学は大物になる証拠。ドイツがコンフェデ杯で優勝できるかどうか、本気でワイン1本を賭けたい気持ちになった。

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