オシムジャパン試合レビューBACK NUMBER

アジアカップ VS.サウジアラビア 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2007/07/31 00:00

アジアカップ VS.サウジアラビア<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 疲れは、決勝まであと少しというところで襲ってきた。

 7月25日、日本はアジアカップ準決勝でサウジアラビアに2−3で敗れ、大会3連覇達成はならなかった。

 準々決勝でオーストラリアを延長PK戦の末に退け、内容的にも充実した試合を展開していた日本だったが、この日のプレーにはその面影はあまり見られなかった。

 オーストラリア勢を無失点で押さえたときのようなピリッとした集中が伝わってこない。立ち上がりから20分頃まで、ボールキープしていつものように攻めて得点機を作ろうとするのだが、うまく歯車が噛み合わない。動きも重く、動く量も範囲もいつもほどのものがない。サポートも遅れ、お互いの距離も遠のいてしまう。

 そのうちに、攻めかけて中盤でボールを失うパターンが続き、ドリブル好きなサウジアラビアに、ボールを持たせて攻め出すきっかけを与えてしまう。リズムに乗れないで苦しむ日本と対照的に、個人技で持ち込んで突破するサウジアラビアは、ちょっとした隙さえあれば日本の懐にはいりこむ。最初の失点は、そういう悪い流れを断ち切れない時間が続く中でFKから与えてしまった。

 そして2−1にされた後半立ち上がり早々の失点も、ハーフタイムのブレイク空けに、不意をつかれたように日本の左サイドを崩されたもの。後半2得点をあげたマーズらサウジアラビアのFW陣には、忍ばせていた匕首を突然突きつけてくるような怖さと鋭さがあり、日本選手は対応しきれなかった。

 だがそれでも、2度にわたって、しかも失点後早々に相手のリードを帳消しにするあたりは、日本が持つ本来の力がうかがえた。

 前半37分にMF遠藤のCKに合わせたDF中澤のヘディングと、後半8分にFW巻の折り返しをボレーで叩き込んだDF阿部のプレーには、「このままでは終われない」という彼らの気迫が溢れていた。

 しかし、この日の日本がそれまでと違ったのは、悪い流れを修復して主導権を完全に自分たちのものにできないところであり、相手を脅かすチャンスをあまり作れなかったことだ。特に3−2にされた後は、反撃を試みてようやく作れたチャンスもあったが、全体にプレーに焦りが見られ、最後を決める切れ味にも欠けていた。W杯や欧州でのプレー経験のある選手もいたが、そういう場面で経験を活かすにはチームとしてはまだまだ若かったということか。

 「疲れているとアイデアも浮かばなかったり、アイデアが出るのが遅くなる。特に中心選手がそうだった」と、オシム監督は指摘し、「選手は最後まで全力を出してがんばったが、残念ながら、疲労の方が彼らを上回ってしまった」と選手を庇った。

 6月30日のリーグ戦中断翌日に集合して直前合宿を行い、ハノイ入り後は連日30度を軽く越える高温多湿の気象条件で試合を続け、しかもほぼ同じメンバーで迎えた5戦目だった。

 「3点目が同点に追いついたすぐあとだったのも痛かった」とFW高原。「自分たちがやれること、やるべきことは明確になっていた。ただ今日に限ってはミスも多かったし、自分たちのプレーをすることができなかった」

 先発メンバーの疲労を考えると、疲労の度合いの低い控えの選手を、この試合かグループリーグの最後のベトナム戦で、何人か起用するオプションもあっただろう。だが、オシム監督はそうはせず、同じメンバーで通した。

 選手を入れ替えればプレーの質が変わる。高原やMF中村俊輔に代わる選手はいない。それに、入れ替えて試合に負けた場合に、新たに起用された選手に非難が集まることをも懸念したのかもしれない。だがなによりも、今回先発で出た選手らで代表チームの土台を固めて熟成度を上げることを優先させたのではないか。それは彼らに対する自信と信頼と、彼らのプレーに象徴される、「自らがこのチームで取り組んできたサッカーをこれからも続けますよ」という監督の意思表示でもあったようにも思う。

 「日本の力がサウジアラビアに劣っていたとは決して思わない」と話すオシム監督。今後の課題についてこう話した。

 「我々のベストの部分をさらによくしなくてはいけない。最もアイデアのある選手たちがよりスピードをもってより多く走ることができ、選手として全面的な能力を備えてさまざまな役割を果たせなくてはならない」

 まだ7月28日にインドネシアのパレンバンで韓国との3位決定戦が残っているが、今大会である程度の手ごたえを感じたからの台詞ではないか。そう考えると、大会3連覇は逃したが、代表チームの今後にとって有意義な大会になったと言えるだろう。

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